2002年7月8日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党など野党四党が共同で国会に提出している公共事業受注企業からの政治献金禁止法案が、五月九日の提出から二カ月になるのに委員会に付託されず、棚上げ状態になっています。「企業献金を悪と決めつけるのはよくない」(自民党・町村信孝幹事長代理)などと、与党側が審議入りを拒んでいるためです。
「いま勉強中だ」
二日の衆院議院運営委員会理事会。四野党が求め続けてきた委員会への付託に、自民党は“身内の都合”を繰り返しました。
「『勉強中』は『やりたくない』という意味の官僚言葉。政治献金という自民党議員の生命線にふれる問題だけに、相手もかつてなく慎重になっている」。与党の法案担当者と連絡をとりあっている民主党理事はいいます。与野党の双方が提出したあっせん利得処罰法改正案とあわせて審議するよう求めても、与党は頑として譲りませんでした。
法案をここまでたなざらしにしてきたのは、企業・団体献金に指一本ふれたくないという小泉内閣と与党の本音があるからです。
一月二十三日の参院本会議。日本共産党の大沢辰美議員が「少なくとも税金を原資とする公共事業の受注企業からの献金禁止ぐらいは、ただちに実施すべきだ」と迫ったのにたいし、小泉純一郎首相は「政党が一定の規制の下で企業・団体献金を受けることは必ずしも悪いとは思っていない」と拒否しました。
その後、公共事業の“口利き”で利権をむさぼっていた加藤紘一元自民党幹事長や鈴木宗男衆院議員らの疑惑が日本共産党などの国会論戦で問題化。小泉首相は与党三幹事長に、公共事業受注企業からの献金規制を検討するよう指示せざるをえなくなりました。
ところが、自民党内から「結局は企業献金は受けられないという話になる」(亀井静香前政調会長、三月三十一日)、「鉛筆一本からコンピューターの納入までいろんなものが公的機関に納められている。それら(の業者からの献金)をだめというと、日本の企業の九割九分が献金禁止となってしまう」(町村幹事長代理、五月三十一日)などの反発の声が続出。小泉首相の国会答弁も「献金のあり方を議論するのはけっこうだ」と人ごとのように変わってきました。
自民党は六月に入って、「政治と資金に関する有識者との懇談会」を発足させ、「七月中旬までに結論」(小泉首相)を出そうとしています。しかし、その議論の方向は「現金での献金禁止」「銀行振込や小切手、為替に限定する」などというもので、公共事業受注企業からの献金禁止から遠ざかるばかりです。
あっせん収賄容疑で逮捕された鈴木宗男衆院議員が集めた年間四億円以上の政治献金の大半は、公共事業受注企業からのものでした。公共事業の財源は税金。鈴木氏は後援企業が公共事業を受注できるように行政に圧力をかけ、ねじまげ、見返りに政治献金を受け取っていた疑惑が数々指摘されているのです。
公共事業受注企業からの献金禁止を求めた野党案は、この“ムネオ型”政治をなくす一歩になるものです。法案のたなざらしは小泉首相と与党がいまだに“ムネオ型”政治にどっぷりつかっていることを物語っています。(高柳幸雄記者)