2002年7月10日(水)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案の審議を見守る傍聴者=9日、参院厚生労働委員会 |
九日の参院厚生労働委員会で日本共産党の大門実紀史議員は、医療保険財政の問題を取り上げ、医療改悪法案の撤回を政府に迫りました。
大門実紀史議員 一・五兆円の国民負担増がさらに家計を圧迫し消費を押し下げることは明らかではないか。
坂口力厚労相 保険制度を維持する財源をどう確保するかが大事。
国民負担増が景気に与える影響をただした大門議員に対し、坂口厚労相は“保険財政のため”という言葉を繰り返し、景気への具体的な影響を認めようとしませんでした。
来年予定されている負担増は医療だけにとどまりません。雇用保険料や介護保険料の引き上げも検討され、さらに財務省は大幅な増税を検討している――。大門議員は「数兆円規模の負担増」が国民に押しつけられるとのべ、「負担増が全体でいくらになるか掌握しているのか」と追及しました。
坂口厚労相は、負担増全体について「これからどうなるかまだ決定していない」と無責任な態度に終始しました。
大門議員 国庫負担を削らなかったら各被用者保険の拠出金はこんなにふくらまず、財政危機を招かなかった。
大塚保険局長 数字の上ではそうなる。
大門議員は、医療保険の財政危機の原因の一つ、老人医療費への拠出金をとりあげました。七十歳以上の老人医療費の財源は、公費負担と各保険からの拠出金、患者負担からなっています。拠出金をだす各保険のうち、国保(国民健康保険)は給付費の50%に国庫負担が入っています。この国保から老人医療費への拠出金が小さくなれば、それに連動して老人医療費にたいする国庫負担割合が小さくなり、一方で被用者保険の拠出金増となってはね返る仕組みになっています。
この仕組みのなかで、老人医療費の国庫負担率は、制度ができた一九八三年に44・9%だったのが二〇〇二年に31・5%に下落。労働者が加入する被用者保険(組合健保など)の拠出金は、同時期に33・3%から41・8%に増えています。
大門議員は、各保険で支える拠出金の考え方は否定しないが、国の負担減を各保険に肩がわりさせてきたことを批判。「国庫負担を減らして財政危機を招いたのだから、国庫負担を戻して解決するしかない」と迫りました。
大塚局長は、国庫負担が小さくなる拠出金の仕組みになっていることを認めつつ、「ただちにやみ雲に入れることにはならない」と拒みました。
大門議員 なぜ政管(健保)の実績を使わないのか。収入を水増しした試算ではないか。
大塚保険局長 推計ですから、どういう前提をつかうか。前提ですから、いかような前提も置ける。
中小企業の労働者が加入する政管健保の保険料引き上げを裏付ける厚生労働省の財政試算のでたらめをあぶりだした大門議員。窮した大塚局長は珍答弁の連続。議場に失笑が起こりました。
この保険料収入の試算で厚労省は今後、賃金が毎年1%ずつ伸びることを前提にしています。
「根拠は」と大門議員は質問。大塚局長は、政管、組合両健保の一九九九年までの過去五年間の実績にもとづくと答弁しました。
ところが、政管の実績は0・54%で半分です。
大門「なぜ組合健保といっしょにするのか。組合をいれても0・86%で1%でない」
大塚「総合的に判断した」
最後は1%未満の端数の数字は使えないとまでいいだしました。
大門議員は、政管健保の賃金実績で試算すれば五年間で四千六百億円の減収と指摘。「財政が五年間もつというが三年で破たんするのではないか。減収になったらどうするのか」と迫りました。大塚局長は「歳入不足があればまず保険料というのが選択肢」と答弁。政府が示してきた政管健保の保険料引き上げ(年五千七百億円)以上になる可能性を認めました。
大門議員は、国庫負担を増やさないかぎり「こういう繕いをやっても必ず破たんが生まれる」と批判しました。