2002年7月23日(火)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案に反対し、地元紙に「医療保険制度が壊れる」との全面意見広告を出した栃木県医師会の宝住(ほうずみ)与一会長に聞きました。
政府・与党が国会会期末、数を頼んで健康保険法等改正案を成立させれば、われわれは次の選挙で与党に厳しい審判を下すことになるでしょう。
参院の参考人質疑で日本医師会の櫻井秀也常任理事が、「法案がこのまま進むのなら、いままで政府・自民党を応援してきたが場合によってはそれをやめざるを得ない。選挙で応援しないところまで覚悟を決めなければならない」とのべました。それだけ地方の医師会や会員の中に法案への反対が強いということです。
法案の一番の問題は健保三割負担など患者負担のアップです。とりわけ一番困るのは慢性疾患を持った患者さんでしょう。
たとえばすべての国民をカバーする公的医療保険のないアメリカでは、人工透析の中止で亡くなる人が、透析患者の死亡者の20〜25%を占めているといいます。
これに比べ、国民皆保険制度を持っている日本では、透析中止や自殺による死亡は透析患者の死亡原因の1%前後です。しかし健保法改正案で患者負担が上がれば、医療へのかかりやすさが失われ、事実上、国民皆保険制度が崩壊してしまうことになりかねません。
私は国民に負担増を求める前に、医療費の構造改革をおこなうことが先だと主張してきました。まず異常に高い医療材料費にメスを入れるべきだと。
たとえば心臓ペースメーカーは一個二百万円。これにたいして埋め込み手術の技術代の診療報酬は六〜七万円とあまりに安い。ところがアメリカではペースメーカーは、一個三十〜四十万円だといいます。
日本では人工関節は百万円、骨折の手術に使うネジが一本一万円程度、プレートが一枚三万円程度します。欧米諸国では数分の一の価格です。
それに日本は薬価も高い。医療材料費や薬価を適正にするだけでかなり財政的な効果があると思っています。また終末医療の適正な見直しも必要でしょう。
小泉首相は、こうした医療費の構造改革をまったくおこなわず国民に負担を押し付けようとしているだけです。小泉内閣の「構造改革」で残ったものは、医療の国民負担増だけというのが実際ではないでしょうか。ハコもの行政、公共事業優先の税金の使い方も変えていません。共産党には、こうした点にメスをいれて変えてもらいたいと思います。