2002年7月25日(木)「しんぶん赤旗」
公明党は、坂口力厚生労働相を先頭に、医療改悪法案成立の推進者となり、国会での審議では唯一、積極的な賛成論をのべています。しかし、参院選などでは「さらなる患者負担増には断じて反対」と公約していました。坂口厚労相を追及した日本共産党の小池晃議員の質問(二十三日、参院厚生労働委員会)から公約違反ぶりを見てみると――。
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小池晃議員 (医療改悪)法案の審議を通じて明らかになってきたのは、法案そのものが問題だらけだということです。参考人質疑(十六日)でも、与党推薦の日本医師会代表が「断固として反対」だと言っている。
こうしたなかで、現在、唯一、積極的にこれを推進しているのが、大臣の所属する公明党です。十六日の質疑では、公明党の沢(たまき)議員から、こういう発言があったんですね。「実はもうこのなかで賛成討論といいましょうか、もう私、公明党の私だけのような気がしております」。正直に沢議員はおっしゃっていたのです。
しかし、公明党にはそんな主張(をする資格)があるのだろうか。
公明党が選挙のときに国民に約束してきたことと、いま大臣を先頭に推進していることは、私は天と地ほどの違いがあると思います。
そもそも九八年の参議院選挙のときに公明党はなんと主張していたか。
九八年六月六日付の公明新聞。参議院選挙直前の選挙政策の特集記事でこう言っています。
大見出しは「公明は高齢社会にこう対応します」。本文にはこうあります。
「公明は、医療費の新たな負担増には断じて反対です。このため、やはり行政改革や公共事業見直しを断行して税金のムダ遣いをなくし、この財源を活用して、高齢社会に対応した医療制度改革を実現する考えです」
機関紙だけではありませんよ。マスコミでも堂々と主張していた。
東京新聞の九八年七月一日付。これは「医療保険に関する主要政党の見解」が載っている。九七年の医療費の負担増(二割負担)についての質問に対して、公明の回答は「患者負担引き上げは、……“時間稼ぎの弱いものいじめ”」。
坂口大臣にうかがいたいのですが、九八年の参議院選挙のときは、御党は、医療費の負担増反対の立場はきわめて明確だった。しかし、政権についたら一転して負担増を推し進める。これを公約違反と言わずして何を公約違反と言うのでしょうか。
坂口力厚生労働相 それは、状態の変化、すべての状況が変化をしたということです。
連立政権ですから、連立政権の政策と固有の党の政策とは当然の違いはありますよ。それは、やむを得ないところはあるというふうに思いますが、それだけではなくて、やはり全体の経済状況だけではなくて、少子高齢化の大きな急激な変化等々、大きな変化をきたしている。変化に対応していくというのは、政党にとりまして、あるいは政治家にとりまして、非常に大事だと思っております。
小池 九八年から何がいったい変化したんですか。九八年から急に高齢者が増えたのですか。そんなことはないでしょう。九八年からすでに景気は悪化していた。
しかも、九八年だけではない。九八年の選挙の三年後、昨年の参議院選挙でも、全国保険医団体連合会のアンケートに答えて「三割負担には反対」としていた。アンケートには、賛成、反対、その他という欄がある。わざわざ反対に丸をしていたわけですから、意思は明確です。
大臣は九八年から変わったといいますが、二〇〇一年からみても、三割負担には反対、国民にむかってはそう言っていた。しかしそれからわずか数カ月で、まさに百八十度態度を変えた。
厚労相 それは、それぞれの立場があるわけですから、大臣は大臣としての立場でことをすすめているわけでありまして、大臣としての立場でことを進めます以上、いままで党としてやってきたことと違うことをやらなければならないこともある。
小池 それもごまかしですよ。参議院予算委員会(昨年十一月)で私が聞いたときも、「党は党であります。厚生労働大臣は厚生労働大臣としての立場があります」とおっしゃいました。そのときは、たしかに法案は出ていませんでしたから、そういう言い方も通用したかもしれません。
このとき大臣は、「現在出ておりますものは一つの試案であって、これから与党内でいろいろのご意見をいただいて、最終的に今年の」、昨年のですね、「十一月の末から十二月のはじめに本当の案を作るということでありますから、これからでございます」と言った、そのときは。
しかしその後、公明党も加わって与党案として正真正銘の三割負担の案が出たわけですから、党の立場も大臣の立場もいまはいっしょじゃないですか。スッキリ負担増推進ということになったわけじゃないですか。だとすれば、党としても明確な公約違反ということになった。これは大臣、逃れようがない。
厚労相 ですから、一つの政党としての意見と、それから連立政権の意見というのとは、それは違わざるをえないことがある。私は厚生労働大臣という位置につかせていただく以上、国全体のことをみてやっていかなければならない。将来のことを考えてやりました場合、選択肢はこれしかないということになれば、当然そういうことになると私は思います。
小池 与党になったときこそ、選挙のときの公約が問われるんですよ。選挙のときに約束したことを、政権に入ったら変わりますということであれば、いったい有権者は何を基準に選挙で投票すればいいんですか。こんなでたらめな話はないですよ。
私は、公明党のかつての主張を見ましたけれども、本当に驚きます。
九七年に、当時の小泉厚生大臣(現首相)が「二十一世紀の医療保険制度」(三割負担案をもりこむ)を発表したときも、あなた方の反対の立場は明確でした。
これは九七年八月十六日の公明新聞の主張。タイトルは「患者負担増はもう限界だ」。九七年に限界だったならば、今はいったい何なのか。
反対理由も明確です。九七年八月十八日付の公明新聞の「党員講座」。何と言っているか。
「お金が今までよりかかるからといって、病院へ行くのを手控えるようになれば、早期治療、早期快癒が可能だったものが重症になるまで放置されてしまうということにもなりかねず、かえって医療費の増大を招くことにもなりかねません」。まさに正論ですよ。
そして、こう書いてあります。「何でも、国民に負担を押し付けて一件落着という自社さ政権は、国民にとってこの上ない不幸な政権というほかありません」
だとすれば、今の自公保政権も国民にとってこの上ない不幸な政権というほかないと思います。
さらにその時に、公明党は、負担増を取りやめるための財源までしっかり示しておられました。
これは九八年の参議院選挙の、全国に配られた公明の法定ビラです。
大見出しは「こんなにあった税金のムダづかい」。公共事業の見直しで七兆円など「徹底したムダ削減で年間10兆円程度の財源確保は十分に可能です」。
そしてこの財源を「景気回復に使います」、「医療の負担増に反対します」。もうハッキリ書いてある。これを忘れたとは言わせませんよ。
しかも重大なことは、いまのこの国会審議のなかで、与党のなかでも公明党が医療改悪の推進を一番熱心にやっている。唯一の積極推進派になっている。選挙ではまったく正反対のことを国民に主張しておきながら、あなたたちはこんな態度をとって恥ずかしくないのですか。
厚労相 やはり、政党には政党としての当然のことながら意見はあります。その政党が一党で天下をとれば、それは、その政党が言ってまいりました通りの政策は実現はできるでしょう。
しかし、連立政権になれば、連立政権としての政策がそこに形成されるわけであります。私は、そのことだけを言っているわけではございませんで、やはり、大きな最近の動向は変化をきたしている。たとえ、過去にそういうふうなことをいったことがあったとしても、やはり、その時代に対応をしていかなければならないということであろうと思います。
小池 過去に一回や二回言ったというんじゃないんですよ。日本国中にそういうチラシをあなた方はお配りになった。それで公明党を支持してくださいとやったわけじゃないですか。
私は、坂口大臣に読んで聞かせたい文書がございます。これまた九七年八月九日付の公明新聞の主張です。
タイトルは「公約実現してこそ公明議員」。
「公明議員は公約を実現してこそ公明議員たり得る。中央政界、地方政界を問わず平然と公約違反を行う口舌の徒が横行し、政治不信、政治家不信の増大がいわれる中で、議員を見つめる住民のまなざしはかつてなく厳しいものがあるが、その中にあって、住民の声に耳を傾け、しっかりした政策を出し、その政策をかならず実行する、という公明議員の闘いこそが住民の信頼を取り戻し根源から政治を蘇生させる道であると確信したい」
ここまでおっしゃっていたんですよ。ごまかすことは許されない。九八年から経済情勢は、あのときだって大きな銀行がつぶれたり、証券会社がつぶれたりしていたんですよ。そういうなかで、連立与党に入った。そのなかで細かい問題で修正をされることはあるでしょう。政党間の折衝のなかで。しかし、負担増賛成と、負担増反対、これはまったく百八十度違うじゃないですか。こういうふうに公約を切り替えたということは、まさに大臣、公明新聞の「主張」に書かれているように、国民の政治不信、政党不信を増大させるものにほかならないと思いますが、いかがですか。
厚労相 何度か同じことを言わされますが、それは、連立政権のなかでやるということは、それは別の政策がそこに生まれるということです。
現在、国民のみなさんがたに多少の負担をお願いするとしても、そのことによって、現在の医療保険制度を堅持していく、守っていく。お願いすべきところはお願いをし、そして将来にむけての政策をここに提出をしたということでありますから、私個人がやはり前に言っていましたことと現在変わったということがあったといたしましても、それは、そういう考え方のもとに私は変わったわけでありますから、そこはご理解をいただきたい。
小池 まったく理解できません。(今回の)一・五兆円の負担が、なんで軽い負担なんですか。大変な負担ですよ。
将来をみてとおっしゃるけれども、公明党は以前、財源の組み替えをすればこんな負担増はしなくてすむというふうに言っていたわけじゃないですか。これをやれば、将来に向けて、医療保険の制度だって安定したものにできるというふうに、かつてはみなさんも主張されていた。
連立政権に入ったら変わるんだとおっしゃるけれども、だとすれば、国民は何を信じたらいいのか。この政党に、公明党という政党に投票しても、政権に入ったらまったく違うことをやるのかということになれば、国民は選挙で何も選びえなくなってしまう。
これは九八年の参議院選挙で、あなた方が有権者に約束したことです。
公明新聞号外、九八年六月二十二日付。
「公明だからできます
ムダをなくして国民還元」
「医療の負担増に反対します。昨年の医療費引き上げに続いて、さらに患者に負担増を押し付ける医療保険制度の『改悪』には断じて反対です」
それから東京都の選挙公報で、当時の公明代表の、はまよつ敏子氏はこう言っています。
「はまよつ敏子は税金のムダづかいをなくし国民に還元します」「医療の負担増に反対します」
これを見て、「ああ、公明党はがんばって医療費の負担増を阻止してくれるんだな」と思って投票した国民は少なくないと思います。いったん投じた票というのは取り返せないのですから、このことの責任はきわめて重大だと思います。
こんな不十分な審議で、これだけの痛みを押し付ける法案を強行するなどということは断じて許されない。しかも、国会審議のなかで唯一の法案積極推進派は公約違反の政党だ。こんな法案は廃案にするほかないということを申し上げて、私の質問を終わります。