日本共産党

2002年7月31日(水)「しんぶん赤旗」

小泉内閣不信任決議案への

松本善明議員の賛成討論(要旨)


 日本共産党の松本善明議員が三十日の衆院本会議でおこなった小泉内閣不信任決議案への賛成討論(要旨)は次の通り。

 私はまず、小泉内閣が、国民生活と日本経済に深刻な影響をもたらす健康保険法改悪案の強行を与党単独で行ったことを、厳しく糾弾するものです。国民に耐えがたい負担増をおしつける法案の中身の重大性に加え、国会のルールも乱暴に踏みにじって採決を強行したやり方は、小泉自公保政権の冷酷で危険な本性を象徴的に示すものです。

「政治と金」で自浄能力なし

 不信任決議案に賛成する第一の理由は、今政治の最大の問題になっている政治と金の問題について、小泉内閣とその与党に、全く自浄能力がないことです。

 鈴木宗男議員の一連の疑惑問題は、政権政党自民党の有力議員が、行政への影響力を不当に行使し、「北方支援事業」や公共事業などに介入・口利きし、その受注企業から政治献金を受け取るという、まさに口利き疑惑・利権の典型です。国民の税金がこうした形で政治家に還流することは、断じて許されません。一連の疑惑の真相を徹底解明し、その政治的道義的責任を明らかにする、自浄能力の発揮が、ほかならぬ小泉首相と自民党自身に問われたのです。

 ところが小泉首相は、まるで他人事のように、何もしなかったのです。

 それどころか政府与党は、疑惑隠しに終始しました。さらに野党四党が共同提案した、「あっせん利得処罰法」の抜本的強化法案には与党をあげて反対し、公共事業受注企業からの政治献金を禁止する政治資金規正法改正案にいたっては審議することすら拒否しつづけたのです。

 また小泉内閣は、内部文書で明白になった機密費問題についても、その真相解明にいっさい手をつけず、闇にほうむったのです。

破たん深刻な対米追従外交

 第二の理由は、外交の深刻な破たんです。

 福田官房長官の「非核三原則」見直し発言、日露領土交渉の先の見えない行き詰まり状態、瀋陽の日本総領事館事件などにみられる小泉内閣の外交姿勢は、この内閣には日本外交を担う資格も能力もないことをまざまざと示しています。その根底には「外交は米国のいうことを聞いていればよい」という長年にわたる対米追従外交があります。

 そのもっとも重大な表れが、アメリカの新しい覇権主義戦略にたいする小泉内閣の態度です。

 アメリカのブッシュ政権は、「テロへの対抗」を口実にして、特定の国を「悪の枢軸」ときめつけ、「先制攻撃も辞さない。必要なら先制核攻撃も辞さない」戦略を決定し、その方針にもとづいてイラクにたいする大規模な武力攻撃まで計画しています。小泉首相は、このアメリカの新戦略を「あらゆる選択肢の一つとして理解する」というおどろくべき答弁をしたのです。そのうえ、米国が、非核保有国への核攻撃拡大を方針としていることについて、「アメリカの考えとして選択肢を残しておくということ」と理解を示したのです。アメリカのいうことだったら、先制攻撃だろうが核攻撃であろうが「理解」を示す、これが被爆国の政府がとる態度でしょうか。これで独立国といえるでしょうか。

有事法制推進タカ派の内閣

 第三の理由は、憲法の平和原則に違反する有事法制を推進する危険なタカ派内閣だからであります。

 有事法制の最大のねらいは、アメリカの戦争に自衛隊が「武力の行使」をもって参戦できるしくみをつくり、そのために国民の人権や自由をふみつけにして強制動員する戦時体制をつくるところにあります。

 だからこそ、法案の中身があきらかになるにつけ、国民の怒りの声が広がり、多くの地方自治体からも不安と懸念がまきおこったのは当然です。ところが政府の答弁は、国民の疑問には答えず、支離滅裂で、法案の矛盾を余すところなくさらけ出しました。こうした法案はきっぱり廃案にする以外にありません。

経済運営ではかじ取り不能

 第四の理由は、小泉内閣が経済運営のかじ取り不能に陥っているからです。

 小泉首相は、内閣発足以来、「今の痛みに耐えれば明日の経済はよくなる」と叫びつづけてきました。確かに「痛み」は、公約どおり国民にのしかかってきました。しかし、明日の展望は何ひとつ見えてこないのです。

 ノーベル経済学賞を受賞し、クリントン政権の大統領経済諮問委員会の委員長を務めたアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏も「今必要な経済政策は、銀行を助けることではなく、国民の暮らしを応援することだ。銀行業界だけに目を向けている小泉の『構造改革』は永遠に勝ち目のない戦いに挑んでいるようなものだ」と痛烈な批判をしています。

 重大なことは、こうした経済状態のところへ、医療改悪で一・五兆円もの国民負担増をおしつけようとしていることであります。加えて、小泉内閣が予定している介護保険の保険料の値上げ、年金保険の物価スライド凍結解除、雇用保険の保険料値上げなどを合計すれば社会保障関係だけで三兆二千億円の国民負担増となる危険があります。社会保障関係だけでこれだけの負担増というのは例のないことです。

 さらに、政府は、配偶者特別控除その他の控除制度の廃止によって約一兆一千億円の増税、外形標準課税により九割の中小企業に六千億円の増税まで狙っています。

 いま、経済は下り坂を抜け出せずにあえいでいます。このとき、再び大幅な負担増を国民にかぶせるならば、経済の大破たんは必至です。これほど冷酷無比で破壊的な経済政策はありません。

 今こそ内需拡大、国民生活支援の経済政策をとって日本経済を立て直す必要がありますが、小泉内閣にはそのような姿勢は全くなく到底信任することはできません。

自民党政治の改革できない

 「自民党を変える」と公約して発足した小泉内閣が、政治腐敗でも、外交でも、経済でも、旧来の自民党政治を改革することができないことは明らかです。

 私は、速やかな解散総選挙で国民の審判を問うことを強く要求し、小泉内閣不信任決議案の賛成討論を終わります。


内閣不信任決議案

野党4党の提案理由(要旨)

 野党四党の小泉内閣不信任決議案の提案理由(要旨)は次のとおりです。

 小泉内閣が発足して一年が経過した。株価の低迷は変わらず、日本経済は依然として予断を許さない状況にある。不景気が続くなかで中小・零細企業から大企業に至るまで企業の倒産件数は増えつづけている。雇用情勢も悪化の一途をたどり、失業率は5%台の高率を維持したままで、若年層と中高年男性を軸にした長期の失業者は増えつづけている。昨年一年間の自殺者は四年連続で三万人を超え、その85%は四十歳以上の中高年が占めている。今日、企業の倒産、失業、自殺者の急増は、わが国の根幹を揺るがす重大な社会問題となっているが、小泉内閣は発足以来、これに対して何ら有効な対応策も示していない。

 こうした中、小泉内閣は、国民に一層の負担増を強いる、「健康保険法等の一部改正案」を野党の反対を押し切って強引に成立させた。厚生労働省の試算で年間の国民負担増は一兆五千億円になる。小泉内閣は、かつて特別減税を中止する一方で、消費税率を3%から5%に引き上げ、さらには健康保険の患者負担を一割から二割に引き上げて、回復しかけた日本経済に大打撃をもたらした愚策を再び繰り返そうとしている。

 また、小泉内閣は、有事三法案、個人情報保護法案、人権擁護法案など、広範な国民と野党四党の厳しい反対にもかかわらず、いまなお、その成立を意図している。我々は、これらの法案の廃案を厳しく求めるものである。

 小泉内閣発足の当初、小泉総理が掲げた「改革」のスローガンに期待を寄せた国民は、「BSE問題」や「外務省疑惑」、さらには防衛庁による「情報公開請求者リスト作成問題」あるいは「政治とカネの問題」、とりわけ鈴木宗男衆議院議員の議員辞職問題などで、小泉総理が見せたまるで他人事のような極めて無責任な態度に落胆し、小泉総理の言う「改革」は、一方的に国民に痛みだけを強いるものであると失望感をあらわにしている。

 最早、小泉内閣に残された役割は一日も早く退陣して「小泉不景気」を一掃し、不況にあえぐ国民の痛みを和らげる以外にはない。よって、ここに一刻も早い小泉内閣の退陣を強く求める。

 


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