2002年7月31日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 こんどの郵政事業の公社化で利権が温存・拡大されると聞きましたが、どういうことですか。(大分・一読者)
〈答え〉 いまの郵政には、特定郵便局長会の選挙動員など政権党との癒着構造、渡し切り費の流用や裏金作りなどの不正体質がみられます。国民が批判しているのもこの点です。しかし先に成立した郵政公社化など郵政関連四法案は、こうした点は不問にしています。むしろこれら“古い利権”の拡大や大銀行のための“新しい利権”に道を開くしくみです。
たとえば郵政事業の主体となる日本郵政公社が、関連企業に出資できる問題です。自民党郵政族議員らが修正要求して、内閣にのませたものです。もともと郵政ファミリー企業をめぐっては、過去に郵政互助会などを通じた国の資金供給が問題となり、資金を引き揚げたことがあります。ところが今回の修正では、事業主体である郵政公社が資金を直接供給できます。以前よりもファミリー育成が野放しとなり、天下りなど“古い”癒着・利権構造の拡大強化となるものです。
また郵政公社化の最大のねらいは、小泉首相自身が「民営化の一里塚」としたように、郵政全体の最終的な民営化です。とくに二百数十兆円の貯金残高をもつ郵便貯金が焦点です。
かねてから全国銀行協会などは、郵便貯金は「肥大化」しているなどと批判し、郵貯事業の廃止や民営化を要求してきました。小口預金などへの口座維持手数料導入や元本保証もないリスク商品など、大銀行らが進めようとするもうけ本位の経営戦略には、簡易・確実な郵貯の存在が障害となるからです。
そのため公社化にあたって郵政事業への国会議決などをなくし、民間経営手法導入など民営化の地ならしをします。郵便への民間参入などはその第一歩です。困難な郵便サービスの存続や、国民の安全な貯蓄手段のゆくえなど、今後の民営化論議の動向を注視していく必要があります。
(博)
〔2002・7・31(水)〕