2002年8月3日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 厚生労働省は年金積立金を株などに投入し、損失が三兆円を超したそうですが、私たちのお金でなぜこんな危険なことをするのですか。(東京・一読者)
〈答え〉 厚生労働省が七月三十日に発表した、二〇〇一年度の公的年金積立金の運用結果は、株式の運用利回り悪化などで一兆三千億円の赤字となりました。旧年金福祉事業団から引き継いだ損失も合わせ、累積赤字は三兆円を超えています。政府が「年金財政の安定化」などと称し始めたものですが、バブル崩壊後は連年赤字で財政悪化しか招いていません。
年金積立金を株式などに投入するようになったのは、比較的近年のことです。かつては郵便貯金などとともに大蔵省の資金運用部に全額が預託され、財政投融資の源資として運用されていました。
ところが、政府の「金融自由化」政策とともに、一九八六年から、積立金の株式運用が始まります。旧厚生省所管の年金福祉事業団が、大蔵省資金運用部から積立金を一部借り入れて行いました。これはバブル期には、財テクブームをあおる役割をはたしました。バブル崩壊後は、株式市場での運用は毎年赤字が続き、九〇年代には累積赤字が二兆円に近づきました。
にもかかわらず、二〇〇〇年度までに、政府は積立金の株投機をいっそう拡大させました。年金などを資金運用部にいったん預託するやり方をやめ、全額を担当省庁らの自主運用としました。年金福祉事業団を廃止して新設した特殊法人・年金資金運用基金を通じ、厚労省が直接の市場運用にのりだしました。このやり方でいっそう傷口を広げたのが、いまの事態です。
公的年金積立金の株投機は、失敗しても政府は責任を負わず加入者の負担増に直結します。アメリカでも反対世論が強く、断念したほどの異常なやり方です。近年は政府による株価買い支えの様相さえみられます。日本共産党はこのような積立金の株市場での運用には、一貫して反対しています。
(清)
〔2002・8・3(土)〕