2002年8月11日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 昨年の東京都議会など、トラック業界の適正運賃へ国の指導強化を要求する自治体があいつぎましたが、現状はどうなっていますか。(東京・一読者)
〈答え〉 いまトラック運送業界では、規制緩和と不況、大企業・大口荷主の値下げ強要などにより、厳しい競争を強いられています。多くの労働者はトラックで各地を転々とし、帰宅が週一回、月一回となることもあります。ある調査では業務中の睡眠・休憩も「車両ベッド」が過半数という状況です。このなかで重大事故も多発しています。昨年十二月に適正な運賃の徹底を求めた東京都議会の決議をはじめ、国の指導強化を求める自治体が相次いでいます。
小泉内閣は、こうした声に背を向け、業者らへの国の責任を後退させる貨物自動車運送事業法の改悪法案を提出し、六月に成立させました。
一つは、運賃・料金の事前届け出制の廃止です。これまでは過度の運賃切り下げ競争などを防止するため、トラック運送業者が営業を始める前に、あらかじめ運賃・料金を国土交通大臣に届けることになっていました。ただ現状は、かつては認可運賃だったのが拘束力の弱い届け出運賃になったため、事業者の立場が弱まり、荷主からの値下げ要求などで六割の事業者が届け出を下回る運賃・料金を強いられています。
これが今後は事後のチェックに変わりました。運賃などは、道路交通の安全にもかかわる問題です。事故になってから「事後」に是正しても無意味です。適正運賃や安全運行への政府の指導責任の大幅な後退です。
もう一つは営業区域規制の廃止です。今までトラック事業者には、安全な運行管理のために営業区域が定められていました。これが全国どこへもトラックを回せるようになれば、全国規模の競争が展開されます。大企業・荷主らの目先の利便性のために、長時間運転など労働者の労働条件を悪化させ、道路交通の安全も脅かすものです。
(水)
〔2002・8・11(日)〕