2002年8月15日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 日本で有給休暇を完全に消化すれば、十二兆円の波及効果があるそうですが、障害になっているのは何ですか。(東京・一読者)
〈答え〉 経済産業省の外郭団体・自由時間デザイン協会が七月に発表した二〇〇二年版『レジャー白書』によれば、二〇〇一年の年休取得率は49・5%です。日本の年休の付与日数が平均十八日なので放棄した年休はほぼ九日。約四千七百万人の正規労働者に当てはめると放棄された年休は四億日に相当します。
同協会の試算によると、年休が完全に消化された場合の経済波及効果は十一兆八千億円となり、年休をとった人の穴埋めに九十二万人、新規雇用五十六万人と、合計百四十八万人の雇用創出がみこまれます。このように、年休の完全取得が経済と雇用によい影響を与えることは、広く認められていることです。
ところが日本の大企業がリストラ・人減らしに走り、年休も満足に取れない生産計画や要員計画を組んでいることが大きな障害になっています。「有給休暇をとってくれといっても、働くのが好きな人がいてとってくれない」(小泉首相、二〇〇一年十一月二十一日の党首討論)など、労働者のせいにして企業を指導しない政府の姿勢も問題です。
もともと年休は労働基準法で保障された権利です。企業は労働者が完全に取得できるようにする責任を負うものです。だから欧州などは年休の完全取得が当然となっており、「取得率」という概念もありません。政府は企業に対し、年休の完全取得を前提にした要員計画などを徹底させる責任があります。
さらに、日本の年休制度(雇い入れから六カ月継続勤務・八割以上出勤で年十日など)の後進性も問題です。一九七〇年のILO一三二号条約は年最低三週間の有給休暇、そのうち二週間は連続休暇とすることを求めています。政府は、年休は雇用慣行などに適合すべきだとして同条約批准を拒否しています。
(清)
〔2002・8・15(木)〕