2002年8月19日(月)「しんぶん赤旗」
介護保険は低所得者の訪問介護利用料が来年度から段階的にアップ。老人医療は十月から大幅負担増。そのうえ年金は来年度給付額カットに―。小泉政治はこの秋からお年寄りに二重、三重の負担増を押し付けようとしています。「高齢者いじめにも限度がある。小泉さんいいかげんにして」の声が上がっています。
夫をなくして以来十年、東京・渋谷区で一人暮らしの中井さよさん(78)は静かな口調ながら、はっきりといいます。「年取ればいろんな所が弱ってきますからね。やはり医療や介護の負担が上がるのは困りますよ。賛成する人なんて、いないんじゃないですか」
五年前にリウマチにかかり、自宅内でも歩行器につかまらないと移動できません。要介護3。でも「できる限り一人でがんばりたい」という中井さん。息子が訪ねてくる週末以外、毎日訪問介護を利用して、一人暮らしを続けています。
住民税非課税世帯の中井さんは、一割の訪問介護の利用料が3%に軽減されています。ほかに週二回の通所介護と週一回の訪問看護を利用し、月約一万八千円かかります。
訪問介護が6%負担になれば、利用料は月約二万二千円に上がります。「ヘルパーが倍ですか。困りますね…」
医療費の値上げも不安です。心臓病の持病もある中井さんは、通院と往診で診療所に月三回かかります。いままでは一回八百五十円(四回まで負担)ですみました。
しかし医療改悪で十月から定額制は廃止。一割負担になれば中井さんの場合、月七千五百円程度に。三倍近い負担増です。「重い負担ですよ。通院のタクシー代にも月七千円かかるのに」
一方、年金は減ります。年金給付額を増減させる物価スライド制について、財務省は来年度予算で、過去三年と今年の消費者物価下落分の計2・3%の引き下げを要求しています。これが実施されれば、中井さんの年金は月四、五千円も減ります。
介護保険の利用料と老人医療の負担増、年金カットによる中井さんへのしわ寄せは、月一万三千円以上にもなります。年間で約十六万円です。その上、介護保険料も値上げされる可能性も高まっています。
中井さんは話します。「年金収入が減るのに、取られる方はあがる、では困りますよ。こういうやり方では高齢者は不安になります。小泉さんのやることは独善的ではないでしょうか。弱いものいじめが過ぎるように思います」
国は介護保険実施(二〇〇〇年四月)の際、利用料負担が重いとの批判のなか「低所得者対策」を決めました。市町村の事業に助成する形で、住民税非課税世帯で介護保険前から訪問介護を受けていた高齢者の訪問介護の利用料を、実施から三年間は3%としました。
その対策も、厚生省(当時)は「二〇〇〇年度から当面三年間3%とし、〇五年度から10%。その間の段階的な引き上げ方としては、たとえば〇三・〇四年度を6%とすることが考えられる」としてきました。
厚生労働省介護保険課は来年度の利用料6%への引き上げについて、八月中にまとめる来年度予算概算要求のなかで方針を明らかにするとしています。その際「段階的引き上げが当時の考え方であり、これに沿って検討する」としています。