日本共産党

2002年8月28日(水)「しんぶん赤旗」

中国社会科学院で不破議長が学術講演

「レーニンと市場経済」について


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不破哲三議長の学術講演を聴く中国の学者・研究者=27日、北京市・中国社会科学院

 【北京27日庄子正二郎】中国訪問中の日本共産党の不破哲三議長は、二十七日午前九時半から正午まで(現地時間)、中国社会科学院で「レーニンと市場経済」を演題にした学術講演をおこないました。会場となった中国社会科学院ホールには、各分野から約百人の学者、研究者が集まり、熱心に聞き入りました。講演後の質問に、不破議長はていねいに答え、理論交流を深めました。

 不破議長は最初に、演題に「レーニンと市場経済」を選んだのは広い意味で中国と日本に共通する問題だからだと説明しました。

 中国は、「社会主義市場経済」の方針を十年前の党大会で決め、市場経済を通じて新しい社会へ進む道を探究しています。日本は、資本主義市場経済のただなかにありますが、日本共産党は、将来、一連の段階を経て、社会主義に進むことを展望しています。当然、市場経済を通じての社会発展、あるいは計画経済と市場経済の結合という道になります。そのことを説明した不破議長は、「そこには、世界史上の新しい発展もあり、また科学的社会主義の理論と実践にとっての新しい問題もある」とのべました。

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学術講演する不破哲三議長

 レーニンは、ロシアで社会主義革命を成功させましたが、当初、社会主義は市場経済と両立しない、それが原則だと思いこんで経済建設にあたりました。しかし、それではうまくいかず、レーニンは、最後の時期の大きな主題の一つとして、市場経済と社会主義の問題に取り組みました。不破議長は、「この過程で、レーニンは、考えを百八十度ひっくり返すような大転換も経験したが、その過程をふりかえることは、現代の問題を考えるためにも、大事な教訓になる」として、レーニンの理論を彼の全生涯にわたって研究してきた成果にたって、いかにしてレーニンが、「市場経済否定論」から脱却して「市場経済を通じて社会主義へ」の路線を確立するに至るかを、具体的に明らかにしました。

 レーニンは、「市場経済を通じて社会主義へ」という方針、「新経済政策」を確立してからわずか一年五カ月後の一九二三年三月に病気でたおれ、二四年一月に死去しました。レーニン亡きあとのソ連で指導権を握ったスターリンは、「農業集団化」を強行するなど、レーニンの路線を断ち切ってしまいました。不破議長は、こうした歴史的経過を分析的に説明し、「『農業集団化』は『新経済政策』の事実上の終結宣言だった。それ以来、『市場経済を通じて社会主義へ』という方針は、ソ連では復活しなかった」と結論づけました。

 「その意味では、中国やベトナムがいま挑戦している『市場経済を通じて社会主義へ』という道は、世界史上、まだどの国も歩き通したことのない道です」――こうのべて、不破議長は、日本共産党創立八十周年記念講演でも、「この挑戦の成果が二十一世紀の世界の流れに必ず大きな影響を与えるであろう」と語ったことを紹介しました。

 「それだけに、この道の前途には、理論的にも、研究すべきいろいろな問題がある」と話を継いだ不破議長は、とくに二つの点について述べたい、として以下のことを明らかにしました。

 一つは、「市場経済の道が社会主義に到達する道として成功するためになにが必要か」という問題。もう一つは、「より将来的な課題として、計画経済と市場経済の結合という道を成功的に進んで、社会主義の目標に到達した場合、市場経済はどうなるのか、消滅してしまうのかそれとも残るのか、残るとすれば、いつまでどの範囲で残るのか」という問題です。

 前者について不破議長は、レーニンの教訓にも学びつつ(1)社会主義部門が、市場での競争で、資本主義に負けない力をもつようになること、その立場で、内外の資本主義から学べるものは学びつくすこと、(2)経済全体の要をなす部分(レーニンは当時の軍事用語を使って「瞰制〈かんせい〉高地」と呼んだ)を、社会主義部門の側にしっかり握って、経済発展を方向づける力を発揮できるようにすること、(3)市場経済が生み出す否定的な諸現象から、社会と経済を防衛すること、をあげました。

 そして、「今日的な問題をつけくわえると」として、環境、社会的格差、各国経済の自主性の問題などが、世界的な経済問題と結びついている状況のなかで「社会主義をめざす経済体制が、社会進歩の立場で、この面での優位性を発揮することが、世界史的な視野での探究の方向になってくる」と強調しました。

 後者の市場経済の前途にかんしては、「なかなかほかの方式では間に合わせられない効用をもっている」として、需要と供給を調節する作用、生産性や企業活動の成績を測定したり比較する点で重要であることを指摘する一方、旧ソ連では、重さで企業の業績をはかることをしていたため、使い物にならない重い家具や機械が作られていたというエピソードを紹介すると、会場から笑い声があがりました。不破議長は、マルクスが共産主義社会でも「価値規定」が残ると言っていたことも指摘しつつ、「市場経済の代用物を探すのは難しい」とのべました。

 最後に不破議長は、「市場経済を通じて社会主義へ」という道は、「広い意味で世界的な普遍性がある」として、日本のような資本主義的市場経済が高度に発達した国でも、「将来、同じ性質の問題に直面することは間違いない」と断言。中国の現実の取り組みと経験を、「成功も失敗もふくめて、注意深く、そして日本の将来展望とも重ね合わせながら、今後とも研究してゆきたいと考えています」とのべて、講演の結びとしました。

出席者と質疑応答

 講演のあと出席者との質疑応答に入り、まず「日本のような発達した市場経済をもった資本主義国で、どのようにして社会主義へ進むのか」という質問が出ました。

 不破議長は、日本共産党はまず民主主義革命を経て社会主義へと進むことを目指していると説明。社会主義の問題では「私たちは青写真は作るつもりはないが」としつつ、「社会主義をめざす政権ができたときには、日本では市場経済の中に社会主義的な部分が生まれ、発展していくという過程をたどるでしょう。レーニン時代や中国では先に社会主義、あとから市場経済という形だが、日本では市場経済が発展していくなかで資本主義ではやっていけなくなって社会主義が生まれることになる」と解明しました。

 次は「市場経済を通じて社会主義へという展望の中で、日本の政治闘争、とくに他の野党と共闘の展望はどうか」という質問でした。

 不破議長は「いまは日本社会が社会主義か資本主義かという選択に直面していません。これは将来の問題です」と前置きし、日本の政治闘争については、「日本の進路の問題で、野党でもたとえばアメリカの基地国家になっているのをやめさせようと主張しているのはわが党しかないが、政府の悪政に反対する点で一致できる可能性はさまざまあり、現実に共闘を前進させている」「政策が違っていても、この数年来、自民党の悪政反対で可能な限り四党が一致していこうという状況になっているところに、いまの日本の政治の大事な前進面があります」とのべました。

 質問者はいずれも「不破議長の話に大いに啓発されました」と発言。ほかにも「日本共産党の考えが非常に現実に即し柔軟であることがよく分かった」(ジャーナリスト、女性)、「中国の社会主義市場経済についても示唆を与えるものだった」(研究者、男性)などの感想がきかれました。

 


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