2002年8月31日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 人事院が国家公務員の給与引き下げ勧告を出しましたが、この勧告制度はどうして始まったのですか。(宮崎・一読者)
〈答え〉 日本国憲法は二八条で、労働者の団結権、団体交渉権、ストライキなどの団体行動権(争議権)を保障しています。しかし、一般公務員の争議を懲役や罰金の対象とする国家公務員法や地方公務員法などで公務員の権利は大きく侵害されています。労働運動を敵視した占領米軍や日本支配層の弾圧立法が存続したためです。中央の人事院や地方の人事委員会による給与改定勧告はその「代償処置」として始まりました。
第二次世界大戦が天皇制政府の敗北で終結すると、戦前弾圧されていた労働運動が急速に発展し、一年たらずで数百万人が労働組合に結集します。三分の一が公務員や公共企業体の労働者で、新憲法のもとで労働基本権も保障されていました。
米軍が主体になっていた連合国総司令部(GHQ)は、一九四六年ごろからデモやスト禁止など弾圧を強化しましたが、四八年七月、GHQのマッカーサー元帥が公務員のスト権はく奪などを要求する書簡を芦田内閣に送りつけました。政府は臨時措置として政令二〇一号を発し、公務員の争議禁止など、労働基本権を奪う措置をとりました。政令の内容は同年十一月の「改正」で国家公務員法に書き込まれます。人事院勧告制度もこのときに始まりました。五〇年公布の地方公務員法にも同様の規定がもりこまれました。
今年八月八日、人事院は今年度の国家公務員一般職給与2・03%引き下げを勧告しました。本給の引き下げ勧告は初めてのことです。「不利益の不遡及(ふそきゅう)」原則もなげすて、すでに支払われた分も年末手当減額で調整するとしました。公務員の労働基本権の「代償措置」の役割もみずから放棄するものです。しかも政府は昨年十二月の「公務員制度改革大綱」で、人事院の機能の縮小・廃止と内閣の人事管理権限強化を打ち出しています。
(博)
〔2002・8・31(土)〕