2002年9月1日(日)「しんぶん赤旗」
政府・与党は、先の通常国会で継続審議となった武力攻撃事態法案など有事法制三法案を秋の臨時国会で「成立」させようと、異例の構えで準備を進めています。
小泉純一郎首相は、夏休み明け初日の二十六日におこなわれた政府・与党の連絡会議で、有事法案などを念頭に「前国会で成立しなかった法案の成立に向けて与党と相談したい。全力投球したい」とのべました。
翌日の自民党役員連絡会でも首相は、「野党の意見も聞き、大方の国民が納得できる形で整備していきたい」とのべ、「修正」を指示。一部野党のとりこみををねらう姿勢を示しました。
内閣官房では、臨時国会冒頭で「国民保護法制」を示すとして、「夏休み返上」の作業がすすめられています。
「国民保護法制」というものの「保護」とは名ばかりで、国民の避難・誘導などを名目に、国民統制をいっそうすすめ、強制動員を具体化するものです。
その作業の中心となる内閣官房は、防衛庁審議官を、有事法制専任の内閣審議官に据えるなど、体制を強化。「国民保護法制」を含め七つの分野ごとに、作業チームを設置しました。
八月上旬に宮内庁以外の全省庁の局長級連絡会議を開催。八月の夏休み期間中にもかかわらず、七つのすべてのチームで、関係省庁の実務レベルである課長級会合が開かれました。
防衛庁は、中谷元・防衛庁長官を責任者とし、内部部局の各局長と統合幕僚会議議長と陸・海・空の各幕僚長などをメンバーとする「国家緊急事態対処検討委員会」を新設。「国民保護法制」などの検討を推進する体制を強化しました。
国と自治体との関係、消防、電波、放送機関への指定公共機関の指定など幅広くかかわることになる総務省では、「有事」における消防や警察による無線局の優先使用について、「現行法で可能」とする方向で検討作業が進行しています。同省は、近く内閣官房に検討作業の結果を報告するといいます。
また、自民党の山崎拓幹事長は、九月上旬から与党の幹事長・政調会長レベルで、「国民保護法制」にかんして、政府に対し作業報告を求める考えを示しました。
有事法案「成立」を確実にするため、臨時国会の召集時期を早めようとする動きも報じられています。
小泉首相は、臨時国会に提出する法案について「必要最小限のものを考えている」(二十七日)とのべ、有事法案など先国会で継続審議となった法案にしぼって成立をはかる考えを示すなど、「成立」に向けた執念を示しています。