2002年9月11日(水)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は十日、次期年金制度見直し(二〇〇四年度実施)を議論している社会保障審議会年金部会に、民間サラリーマンが加入する厚生年金の六十五歳支給開始について予定を早め前倒しで実施することを検討テーマとして示しました。高齢者の「就労促進」のためには、年金をもらいはじめる年齢を六十五歳にする時期を早めることが効果的というのが提案理由。「就労促進」による高齢者からの保険料徴収増がねらいです。支給開始年齢を遅らせる分、生涯の年金給付を削減することにもなり、国民に新たな「痛み」を求めるものです。
厚生年金はこれまで六十歳支給でした。これが六十五歳支給に改悪され、一歳ずつ段階的に支給開始年齢を繰り延べています。厚生年金のうち定額部分(基礎年金部分)は昨年四月から六十一歳支給となり二〇一三年度に六十五歳支給に、賃金に応じて受給する報酬比例部分は二〇一三年四月から六十一歳支給となり二〇二五年度以降は六十五歳支給とする予定です。女性は定額、報酬比例部分とも五年遅れの実施予定です。
こうした実施スケジュールを早めることが現在の経済情勢などから見て現実的かどうかの検討をというのが厚労省の提案です。
報酬比例部分の六十五歳支給は前回の二〇〇〇年の年金改悪で決めたばかり。支給開始年齢を遅らせたので、今後は「無理のない負担で確かな給付」になると改悪法を国会で強行採決しましたが、わずか二年で国民への約束をほごにする考えを示したものです。
厚労省はさらに、支給開始年齢を六十六歳以上に引き上げることも検討課題として年金部会に提案しました。六十五歳支給開始年齢の実施スケジュールの前倒しにたいし、審議委員から明確な反対意見はでませんでした。同部会では厚労省の提案をうけて集中審議をおこない、十月中にも部会としての年金制度見直し全般にわたる論点を整理するとしています。