2002年9月19日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 シベリア抑留者の未払い賃金の問題が未解決と聞きました。どういうことですか。(静岡・一読者)
〈答え〉 第二次世界大戦終結前後、約六十万人の日本兵士や民間人がソ連の捕虜として連行され、国際法に違反して抑留中に極寒のシベリアで強制労働をさせられ、約六万人が死亡しました。抑留者は一九四六年十二月から五六年までに帰国しましたが、過酷な労働の未払い賃金がまだ支払われていません。
この問題は無法な抑留をしたソ連に決定的責任があります。同時に日本政府も、連合軍の捕虜になり抑留国から帰国した兵士などには、抑留国の「未払い賃金証明書」(労働証明書)にもとづいて労働賃金を支払っています。政府にはシベリア抑留者への未払い賃金の支払い責任が問われています。元シベリア抑留者でつくる全国抑留者補償協議会(全抑協)は、連合軍の抑留者と同様に未払い賃金を支払うよう求めていますが、政府は「シベリア抑留者問題は決着済み」などと拒否しています。
ソ連は労働証明書の発給さえも拒否してきましたが、ソ連崩壊後、九四年にロシア政府が三万八千人の労働証明書を発給しました。日本政府はすでに四七年、ソ連に労働証明書の発給を行うようGHQを通じて要請しています。証明書があれば支払う意思を、当時示していたもので、今日、ロシア政府の労働証とひきかえに未払い賃金を支払うことは当然のことです。
日本共産党の小沢和秋衆院議員は三月二十日の厚生労働委員会で、この問題で政府を追及しました。坂口力厚生労働大臣は「外務省とも含め、検討させてください」と答弁しました。
約二百四十万の兵士がソ連に抑留されたドイツは、抑留期間に応じた補償金や釈放手当などを支払い、援護措置も講じました。これに比べても日本の対応は不当なものです。元抑留者の平均年齢は八十歳を超えており、政府は解決を急ぐ責任があります。
(博)
〔2002・9・19(木)〕