2002年9月20日(金)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は、六十歳代前半の厚生年金支給を廃止する改悪を決め、昨年度から二〇二五年度まで二十四年間かけて段階的に実施しますが、この改悪を前倒しして時期を早める検討を始めました。次期年金制度見直し(二〇〇四年度実施)を検討している社会保障審議会の年金部会に示したものです。場合によっては支給開始を六十六歳以降に遅らせることもあると提起。検討段階とはいえ、現役労働者にとって目が離せない問題です。
政府は、一九九四年と二〇〇〇年の二度にわたる年金改悪で、厚生年金の六十歳支給をやめて、六十歳から六十四歳までの五年間の年金を国民から奪い取る改悪を強行しました。公務員の加入する共済年金も同様の改悪となりました。
厚生年金は、年金加入者共通の「定額部分」(基礎年金)と、現役時代の給与に応じて支払った保険料によって支給額に違いがでる「報酬比例部分」の二つの部分に分かれています。
定額部分の年金を受け取れる年齢は、昨年度から六十一歳に引き上げられました。本来なら六十歳支給だったのですから、一年分の年金を削られたことになります。二〇〇四年度には六十二歳支給になり、二年分の支給カット。こうして支給開始年齢を一歳ずつ遅らせ、二〇一三年度で六十五歳までの定額部分の支給を全部なくすスケジュールを組んでいます。
報酬比例部分は、二〇一三年度から支給開始年齢が遅らされます。たとえば、現在四十五〜四十七歳の男性の場合なら、六十二歳にならないと年金がもらえません。
今回、厚労省が検討テーマとして示したのは、この改悪の実施スケジュールを前倒しするというものです。前倒しの方法としては(1)三年ごとに支給開始年齢を一歳ずつ引き上げることになっているペースをはやめる、(2)報酬比例部分の支給くりのべを実施する時期を、二〇一三年度よりはやめる――などが考えられます。六十二歳支給になる予定の人が、六十三歳、六十四歳……と遅れていくことにもなります。
厚生年金の受給者の年金額は、平均で月約十七万七千円(二〇〇〇年度)、一年間で約二百万円です。五年分では約一千万円もの削減となります。
老後の生活設計に重大な影響を与える改悪ですが、厚労省は「年金の支え手を増やす」「六十歳代前半の高齢者のさらなる就労促進のため」だとしています。
不況を深刻にして高齢者の仕事の確保をいっそうむずかしくしながら、一方で「就労促進」を口実に年金給付の改悪を狙うのが、小泉内閣の「年金改革」です。これでは、国民の将来不安はますます高まり、公的年金への信頼を低下させるだけです。(秋野幸子記者)