2002年9月20日(金)「しんぶん赤旗」
行きつくところまで行きついた――。日銀が十八日に発表した銀行保有株の買い取り方針は、市場関係者もアッと驚く内容でした。速水優日銀総裁自身が「世界の中央銀行で民間の株を持っているところはない」と認めています。前代未聞のこの方針は、国民にどんな影響を与えるのでしょうか。(石井光次郎記者)
日銀の業務は日本銀行法で決まっています。民間金融機関の預金受け入れ、国のお金(国庫金)を管理するほか、手形や国債の売買などです。「通貨の番人」といわれる日銀が、株のように不安定な資産を持つのは危険だからです。「日銀法では株は持てないことになっている」(速水総裁)のです。
銀行が売却しなければならない持ち合い株は、時価で約七兆円。日銀の買い取りは数兆円の規模になるとみられます。もし日銀がこれを購入すれば、日銀資産の健全性は担保されなくなります。株価が下がって損失が出れば、日銀の資金で穴埋めしなければなりません。
日銀は、価格変動に備えるため「準備金」を積みたてる考えです。新しい費用が増える分、本来なら国庫に入るはずの国庫納付金(〇一年度、八千八百九十五億円)が減ることになります。国の歳入が減り、それを補うために国民の負担が増える危険もあります。
日銀の財務内容が信用できないとなったら大変です。日本の通貨「円」まで、“危ない通貨”とみなされかねません。
日本経済への評価がさらに悪くなれば、国債の値段や長期金利にも影響がでます。日本への信用が下がれば、利回りを上げなければ国債も売れなくなります。
株を買い取ることで一時的に株価は上がるかもしれません。しかし、外国為替や債券市場に有害な混乱を生むだけで、肝心な銀行の「健全化」が保証されるわけではありません。
それでも異常な対策に踏み切った背景には、「不良債権早期最終処理の加速」という小泉首相の対米公約があります。しかし、小泉内閣が進める不良債権処理が、中小企業への貸しはがしや倒産の激増で景気をいっそう悪化させ、不良債権を増やしてきたことは金融庁の発表でもはっきりしています。不良債権処理をすすめるための、露骨な大銀行救済策では景気を悪化させるばかりです。