日本共産党

2002年9月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

公的資金投入

破たんした愚策繰り返すのか


 大手銀行への公的資金投入論が噴出しています。銀行の不良債権処理を加速させることが目的です。

 塩川財務相は二十五日の記者会見で公的資金投入の必要性を強調しました。竹中経済財政相は公的資金の再注入や銀行国有化を主張し、経済財政諮問会議の民間議員も同様の提言をしています。

 小泉首相が十二日の日米首脳会談でブッシュ大統領に不良債権処理の加速を公約し、公的資金投入論にはずみがついた形です。

国民にツケ回し前提

 銀行の不良債権処理に公的資金を投入するというやり方は、旧長銀や旧日債銀の経営破たんに際しても経験済みです。国民にツケを押し付けただけで、何の効果もなかったことはすでに明らかになっています。

 それを、アメリカの圧力があったからといって、また繰り返そうというのは、小泉内閣の経済運営のゆきづまりを証明する以外のなにものでもありません。

 投入した公的資金が焦げ付けば、国民の血税で穴埋めすることになります。実際に旧長銀や旧日債銀は、経営破たんによって株価がゼロとなり、公的資金で買い上げた株式に一円の価値もなくなって国民負担で処理されました。

 これまでの三十兆円にのぼる公的資金投入策の結果、三分の一は国民へのツケ回しが確定しています。しかも金融を健全化するどころか中小企業への貸し渋りがいっそう激しくなって、反対にますます「不健全化」を深めてきたのが実態です。

 そもそも、不良債権の増加に拍車をかけ、金融の弱体化を一段と進めた最大の原因は小泉内閣の不良債権処理の強行策にあります。倒産・失業を増やし、景気悪化を招いたために、この一年で全国の銀行の不良債権は十兆円も積み上がりました。

 米大統領に追随して、こんなやり方をやればやるほど不良債権は増える一方です。公的資金によるテコ入れは倒産・失業に加えて血税投入という二重の国民被害を拡大します。

 自民党からは、整理回収機構(RCC)が銀行の不良債権を買い取る際の価格を大幅に引き上げるべきだという声も出ています。寺西・全国銀行協会会長(UFJ銀行頭取)も二十四日の記者会見で、買い取り価格の大幅引き上げを要求する考えを明らかにしました。買い取った債権の損失を、最後は税金で補てんすることを前提にした議論です。

 過去二回の資本注入によって、一部の大手銀行では、自己資本に占める公的資金の割合が六割、七割にのぼっています。新たな資本注入を実行しようとすれば、大規模な国有化策に踏み込むことにもなりかねません。銀行グループが巨大化していることとあわせて、国民負担の規模も従来の比ではなくなるでしょう。

くらしに軸足置いて

 重大なのは、銀行への公的資金投入体制がもたらした政治的・経済的な道義の崩壊です。日銀も前代未聞の株購入に踏み出す方針を表明しています。

 “ゆきづまったら公的資金”というモラルハザード(倫理破壊)に、銀行業界も政府・与党、日銀も、骨の髄までむしばまれてしまった観があります。

 国民には社会保障や税金の負担増を押し付けながら、大銀行には大盤ぶるまいの逆立ちした政策では、経済危機をいっそう深刻にするだけです。不良債権問題を解決するためにも、国民のくらしに軸足を置いた経済政策への転換が重要です。

 


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