2002年9月28日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 「高齢者のための国連原則」というのを聞いたことがありますが、何を決めたのですか。(大阪・一読者)
〈答え〉 二十世紀終わりごろから、高齢者人口の増加は一部工業国だけでない地球規模の現象になってきました。現在、世界には六十歳以上の人が約六億人いますが、二〇五〇年までに二十億人に達すると予測され、途上国での急増が見込まれています。
「高齢者のための国連原則」は、一九九一年の国連総会で決議されたもので、世界的に比重を高めている高齢者の人権保障の諸原則を確認しています。各国政府が自国の計画にこの諸原則を可能な限り組み入れるよう奨励するもので、九九年の国際高齢者年や今年四月の第二回高齢化問題世界会議など、のちに国際的なとりくみが進められる基礎となっています。すべての高齢者が社会参加し自己の可能性を伸ばす条件を整えることは、国境を超えた二十一世紀の大きな課題の一つです。
国連原則は▽独立(自立)▽参加▽ケア▽自己実現▽尊厳―の五つの基本原理と十八の原則を示しています。
たとえば「独立」の問題では、「十分な食料、水、住居、衣服、医療」といった基本的権利に加え、高齢者の「退職時期の決定への参加」や「可能な限り長く自宅に住むことができる」などの原則があります。年齢を理由とする退職強要が横行し、住宅施策や介護保障も貧弱な日本でも、切実な課題です。
他の問題でも、▽高齢者が「社会の一員として、政策の立案や実施に参加」すること▽どんな場所・状態でも「自己の尊厳、信念、要求、プライバシーおよび自己の介護と生活の質を決定する権利」▽虐待や差別を受けず「公平に扱われ、経済的寄与にかかわらず尊重される」―などがあげられています。
日本では、この国連原則が決議された以後の十年間、自民党政治のもとで医療や社会保障の切り捨てなど、むしろ逆流が強まっています。
(博)
〔2002・9・28(土)〕