2002年10月1日(火)「しんぶん赤旗」
高齢患者の四割以上が医療費が高くなったら「大変になる」と不安をかかえ、その二割近くが「食費・生活費を削る」ことを考えている――。十月一日からの高齢者医療の改悪を前に、北海道社会保障推進協議会(黒川一郎会長)は三十日、道民医連加盟病院などで実施した患者聞き取り調査の結果を発表し、医療費大幅引き上げが強行・継続されたら、高齢者の健康と暮らしがいっそう悪化しかねない実態を浮き彫りにしました。
同社保協は、相次ぐ医療改悪に加え、一日からの高齢者負担増にどう対応しようとしているのかを調査。道内二十三の病院、診療所、薬局で七十歳以上の患者に聞き取りを実施(十八〜二十四日)。回答は千百八十八人でした。
一日から制度が変わることを「知っている」は73・3%。一方、「知らない」は26・4%で、回答者の四分の一を超えていました。
「今より病院代が高くなったらどうしますか」の問いに、「変わらない」は11・9%にとどまり、「仕方がないのでがまんする」が39・1%、「大変になる」が43・6%にも達しました。
「大変」と答えた人に、重ねて「どうしますか」と問うと、「食費・生活費を削る」(17・4%)、「通院回数を減らす」(17・0%)が上位。「検査を減らす」「薬を減らす」と続きました。
アンケートに書き込まれた高齢患者の声は「ニュースを聞いてもさっぱりわからない」「償還払いの仕組みが分からない」と不安ばかり。「何をどう減らしたらいいのか教えてほしい」「入院したら死ぬしかない」「毎年、大腸と胃カメラをしているが、どうしようか…」など深刻な声があがっています。
一日実施のお年寄りの医療改悪で、在宅医療を受けるお年寄りの健康状態の悪化を危ぐする声があがっています。
「負担増に耐えられず医療や介護サービスを減らして、状態が悪化するお年寄りが次々出かねません」。こう指摘するのは、東京・足立区の千住新橋訪問看護ステーションの犬塚則子所長です。
一人暮らしで重い痴ほう症の八十代の女性のケースをみると―。
これまで往診と訪問看護(一回六百四十円、五回まで負担)を受け、医療の負担は月四千九百円でした。薬局への支払いはありませんでした。
ところが改悪で、窓口負担はかかった医療費の一割に。新たに薬局でも一割負担が必要になり、負担は月一万一千二百四十円に跳ね上がります。
ほかにも介護保険のデイサービスや訪問介護などをめいっぱい利用し、利用料は月三万三千円ほどかかっています。
医療や介護の費用は長男、長女が負担しています。そのため五十代の長男の妻は、昼間はパート、夜は近所に住む義母に夕食を届けてからアルバイトに出て、費用を捻出(ねんしゅつ)しています。
犬塚さんは九月末、長男の妻に負担増のことを伝えました。妻は電話の向こうで、「そんなに上がるんですかッ」とびっくり。そして「いま以上払えないから、減らすことを考えたい」と申し訳なさそうに言いました。
サービスを少なくすることは可能か。「デイサービスを減らしたら女性が一人でいる時間が長くなり、痴ほうが進むでしょう。訪問看護を減らせばケガや体調の変化がわからず危険。自宅での暮らしは、いまよりかなり厳しいものになってしまいますね」。犬塚さんは、ため息をつきます。