2002年10月2日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 先日説明があった年五十兆円の公共投資ですが、なぜアメリカはこんな要求をしたのですか。(埼玉・一読者)
〈答え〉 アメリカが巨額の公共投資を日本に要求したいちばんの目的は、日本の大企業の競争力を輸出など対外面ではなく、国内に向けさせることでした。当時、日米協議に出席したマコーマック米国務省次官の「政府が民間の資金を吸い上げて、輸出に結びつく製造業分野から公共事業分野へ、資金と人を移転させてはどうか」(日本放送出版協会『日米の衝突』)などの発言が伝えられています。輸出産業など民間設備投資に回る日本の資金を公共事業に吸収すれば、対米輸出なども弱まるだろうというものです。
過去数次にわたる日米交渉や金融当局の円高・ドル安誘導にもかかわらず、一九八〇年代のアメリカの対日貿易赤字は拡大の一途でした。業を煮やしたアメリカは、八九年に「日米間の構造的な問題」の協議を日本に要求し、九〇年までの日米構造協議となります。
アメリカの要求は二百項目にも及びましたが、公共投資の拡大は、そのなかでもとくに重視された要求の一つです。アメリカは日本の民間設備投資の伸びが大きいことを重大視し、公共投資の比重が低下しているなどとして、拡大を要求しました。
それは公共投資額をGNP比10%にするという無法なものでした。これほどの公共投資は、高度成長期や石油ショック直後の経済テコ入れなど、例外的な一時期にしかなかったものです。欧米は通常1〜3%台なのに比べても、けた違いです。
日本側はGNP比の代わりに総額を決める方式を提案し、了承されます。これが二〇〇〇年までに四百三十兆円、やがて二〇〇七年までに六百三十兆円の公共事業計画となりました。
異常な公共投資はまた、ゼネコンをはじめ大企業の、目先の利益にもなりました。無謀な大型プロジェクト強行のつけは、巨額の借金として国民にのしかかっています。
(清)
〔2002・10・2(水)〕