2002年10月9日(水)「しんぶん赤旗」
内閣官房が八日の全国知事会に示した、「国民の保護のための法制の基本的な構成(素案)」は、有事法制の一つである「国民保護法制」が、国民の戦争動員を具体化するためのものにほかならないことを改めて示しました。
一つは、今回の「素案」で、バスや地下鉄など自治体の管轄下にある機関などを念頭に「指定地方公共機関」を新設し、動員対象を広げようとしていることです。
すでに、武力攻撃事態法案では、災害対策基本法を参考にして、JRや道路公団などの公共機関を「指定公共機関」に指定しようとしています。新たに「指定地方公共機関」なるものをつくることで、地方の公共機関まで戦争動員されることになるのです。
もう一つは、有事の対処計画づくりを自治体や民間にまで義務づけようとしていることです。災害対策基本法にもとづく指定公共機関は、「防災業務計画」を作成することが義務づけられ、対策本部の設置や非常招集などの対応を定めています。さらに、緊急輸送路の確保(道路公団)、緊急輸送計画の遂行(日本通運)、救護班の派遣(日本赤十字社)、重要通信の確保(NTT)など特別の手だても盛り込んでいます。これらは「災害」対策では必要な措置ですが、こうした対処計画の「有事」版の策定を、自治体、指定公共機関、指定地方公共機関に強いることをねらっているのです。
しかも、内閣官房は「国民保護法制」のなかで違反者への罰則まで検討しています。
一方では、政府は「国民保護法制」の概要で、避難、誘導など「国民保護」を押し出すことで、国民の批判をかわそうとねらっています。目標を前倒しして、法案成立前から検討作業を先行しているのも、一部野党や自治体のとりこみをねらってのことです。
しかし、武力行使をもって米国の無法な戦争に参加するという有事法案の危険な本質は隠せません。「国民保護法制」も、その内容を示せば、示すほど、「国民保護」に名をかりた戦争動員計画であることが浮き彫りになります。(田中一郎記者)