2002年10月9日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 管理職にも残業手当の権利があると聞いたのですが、まわりで支払われている人はいないようです。どうなっているのですか。(神奈川・一読者)
〈答え〉 多くの企業では、課長・係長などの中間管理職になると、あたかも経営者と同様に扱われ、残業手当が打ち切られています。そのためか、管理職は残業手当とは無縁と思い込んでいる人も少なくありません。しかし管理職の多くは、実態をみれば、労働基準法の労働時間などの規定が適用される労働者であり、残業手当を受けとる権利があります。なにか役職がついたからといって、自動的に残業手当の権利が消滅しないことは、政府の通達でも確認されている原則です。
労働基準法は職場で守るべき労働時間や休日などの基準を規定していますが、同時に四一条で、「監督若しくは管理の地位にある者」には、これらの規定を適用しないとしています。中間管理職はこの「管理監督者」にあたる、というのが、残業手当を支払わない企業のいい分になっています。
しかし厚生労働省の一九八八年の通達では、管理監督者とは「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」「名称にとらわれず実態に即して判断すべきもの」(労働省基発第一五〇号)として、職責や勤務態様の実態にもとづいて判断すべきだとしています。与えられた業務のために早朝出勤や残業を余儀なくされているような多くの管理職は、「経営者と一体的」な「管理監督者」とはいえません。中間管理職の未払い残業手当支給を命じた裁判判決や、労基署の指導で未払い分を支払った事例も出ているのはそのためです。
また管理職の深夜の残業が常態となっている職場もありますが、午後十時から午前五時までの深夜労働には「管理監督者」であっても割増賃金を受け取る権利があります。厚生労働省の同じ通達が示しているもので、すべての管理職にも当てはまるものです。
(博)
〔2002・10・9(水)〕