2002年10月16日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 ユネスコの「教員の地位に関する勧告」とはどんな内容の勧告なのですか。(東京・一読者)
〈答え〉 「教員の地位に関する勧告」は、一九六六年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の特別政府間会議で採択されました。「教育の発展における教員の本質的役割」を重視し、教育の専門職にふさわしい教員の地位に関する諸原則、具体的条項がもりこまれています。
日本政府も六六年の採択では賛成しましたが、歴代の自民党政権の教育政策で、ユネスコの勧告からかけ離れた状況が教育現場に生まれ、勧告の内容を生かすことが求められています。
たとえば勧告の第八六項は、「学級の規模は、教員が個々の生徒に注意を向けることができる程度のものとする」としています。欧米諸国では二十人〜三十人学級が大勢ですが、日本ではようやく自治体独自の少人数学級編成が認められるようになったばかりです。
また第四五項は、教員の雇用安定と身分保障について「教育及び教員の利益に欠くことができない」としていますが、小泉内閣は国が教員の給与の半額を負担している義務教育費国庫負担制度の廃止を検討し、自治体や関係者に不安を与えています。
「教員の地位に関する勧告」は条約ではないため、法的拘束力はありません。そのかわり、一九六八年から、国際労働機関(ILO)とユネスコの共同専門家委員会が定期的に開かれ、勧告の実施状況などを監視しています。
今年六月、全日本教職員組合(全教)は、いま文部科学省が進めている、各地の教育委員会などが一方的に「指導力不足教員」を認定し転職強要する政策などについて、勧告が守られていないとの申し立てを、ILO東京支局を通じて共同専門家委員会に提出しました。受理されれば来年秋から審議され、日本政府にも回答を求めるなどの手続きがとられます。
(水)
〔2002・10・16(水)〕