2002年10月20日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 シックハウス症候群の被害が増えているようですが、行政のとりくみは進んでいるのですか。 (東京・一読者)
〈答え〉 住宅や建物の中で、目やのどの痛み、めまい、不眠などの健康障害を訴える人が増えており、シックハウス症候群とよばれています。未解明な部分が多いものの、建築材料や家具などに使用される、揮発性有機化合物(VOC)が原因とみられています。とくにホルムアルデヒドは被害建物の多くで検出され、代表的な原因物質と考えられています。厚生労働省は、現在入手可能な知見をもとにガイドラインづくりを進めており、これまで十三種類のVOCの、室内濃度の指針値を発表しています。
今年七月に改定された建築基準法に、シックハウスへの対策が国内法として初めてもりこまれ、来年施行されます。法的な規制が始まったのは一歩前進といえますが、内容はきわめて不十分なものです。当面は、▽シロアリ駆除剤のクロルピリホスは使用禁止▽建材の接着剤などから出るホルムアルデヒドは、室内濃度が厚労省の指針値(0・08ppm)以内となるよう使用を制限▽機密性の高い建築物に換気設備設置を義務付ける―との対策がとられます。
この対策には、次のような問題点が指摘されています。▽当面とはいえ二種類しか規制されていない▽室内濃度の規制も、マンションなどでは換気装置の運転を前提にし、VOCの使用を大幅に許容している▽建築基準法による行政のチェック体制は、建築確認の書面審査以外は実施率が低い現状があり、基準を守らせる実効性に欠ける―。
こうした問題点を正すこととともに、根本的にはVOCを使用した建築材料が増えている現状にメスをいれ、製造者責任を明確にし安全な材料開発を促すことが重要です。建築材料などのJIS規格表示強化や、公共性の高い建物の定期測定・情報公開、治療機関の対応や行政の窓口相談など、総合的な対策が求められます。
(水)
〔2002・10・20(日)〕