2002年10月24日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 いまのWTO協定でもできる、農産物の価格保障の規模はどれくらいになりますか。(静岡・一読者)
〈答え〉 いま、米や野菜などの輸入急増で、農産物価格は再生産費もまかなえないほど下落しています。政府の失政によるBSE(牛海綿状脳症)感染牛事件や、雪印の食中毒事件、一連の偽装表示事件などでも農業は大きな被害を受けています。
もともと日本は、きわめて食料自給率が低く、農業分野の強化こそが必要です。世界貿易機関(WTO)の農業協定は、各国の実情の違いを無視して農業保護を一律に削減させ、日本をはじめ多くの国の農業に打撃を与えています。このような協定は改定されるべきですが、現行の協定のもとでも認められている、セーフガードや価格・所得保障政策などを積極的に行使することも、国民に責任を負う政府なら当然の行動です。
WTOの農業協定は、加盟国が国内農業への助成を、一定量削減することを義務づけています。削減目標を達成したかどうかは「助成合計量」(AMS)ではかります。それは、削減対象となっている価格保障などの農業予算額に、対象品目の内外価格差の総計を加えた額で計算されます。具体的には、一九八六年〜八八年の助成合計量を基準として、九五年から二〇〇〇年までに20%削減することになっています。
日本の場合、約五兆円を約四兆円まで削減することになります。ところが九九年度で、すでに七千五百億円まで削減してしまいました。協定で許容された枠を三兆二千億円もくいこんで、余分に削減したのです。
この削減は国際的にも突出しており、日本がこの枠の範囲で価格保障を実施することは、現行のWTO協定でも可能なことです。公共事業費が半ばをしめる農業予算のゆがみをただすことなど、財源確保のためにできることは多くあります。
(博)
〔2002・10・24(木)〕