2002年10月24日(木)「しんぶん赤旗」
「セーフティーネット(安全網)の拡充どころか、政府の責任放棄そのものではありませんか」――。二十三日の参院本会議の代表質問で日本共産党の市田忠義書記局長は、小泉内閣が「不良債権処理の加速」に伴い検討している雇用や中小企業の「セーフティーネット」が、いかに政府の責任をなおざりにしたものかを明らかにしました。
その一例として市田氏があげたのは雇用保険です。一九九九年度版『労働白書』では雇用保険の役割として、景気落ち込みの抑制や失業中の家計の下支えの効果をあげ、「求職活動を可能にすることにより、就職活動を促進させること」とのべています。
ところがこの間、政府がやってきたことは、完全失業率や完全失業者数が増えているのに、雇用保険の給付額を減らすことでした(グラフ参照)。一九九九年度と比べると、今年度は実に六千億円減。そのうえ小泉内閣は今後二千億円もの給付を削減しようとしています。
「給付を減らせば、早く就職に結びつくなどという言い訳は通用しない。現実に失業は増えており、失業保険をもらえない失業者はさらに増えている」と市田氏。「少なくとも失業率が3%程度の水準に戻るまでの緊急措置」として、雇用保険給付期間の一年間までの延長、雇用保険が切れた失業者への生活保障制度の創設、臨時のつなぎ就労の場の創設を提案しました。
さらに若者の就職難を「日本社会の未来にかかわる問題」として位置づけ、本腰を入れた対策を求めました。
小泉首相は、雇用保険の給付日数延長について「失業者の滞留を招く恐れがあり、企業ごとに保険料を異ならせることは、雇用保険がすべての労使の共同連帯による保険制度であることから、適切でない」と拒否しました。
市田書記局長は代表質問で、東京電力などによる原発の損傷隠し問題に関連して、独立した原子力規制機関の設置と、原発の危険性を増大させるプルトニウム循環方式からの撤退を強く求めました。
日本では、原発を推進する経済産業省の一部局である原子力安全・保安院が、原子力の規制を担当しています。
市田氏は、東電などの不正について「長年放置されたままであった原因の一つに、原子力発電を推進する経済産業省の中に、規制を担当する保安院を置くという、矛盾したやり方があった」と指摘しました。
小泉首相はこれにたいし、強制力のない「勧告」や認可の際の補助的な権限しかない原子力安全委員会をあげ、「現在のダブルチェックの体制が有効に機能する」と答弁しました。
市田氏は、プルトニウム循環方式が、その危険性からアメリカ、ドイツ、フランスなど国際的にも放棄された方式であると指摘し、「これに固執することは、危険をいっそう広げることになる」と強調しました。
プルトニウム循環方式の一つ、「プルサーマル」計画は、東電などの不正発覚後、福島県や新潟県が事前了解を白紙撤回しました。市田氏は「政府もこの方式を優先すべきではない」と迫りました。
小泉首相は、核燃料サイクルの確立は「重要な政策に変わりがない」と答え、国民の安全より、危険な計画を優先する姿勢を示しました。