2002年10月24日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の市田忠義書記局長が二十三日の参院本会議でおこなった、小泉首相の所信表明演説への代表質問(大要)は、つぎの通りです。
私は日本共産党を代表して小泉総理に質問いたします。
いま、わが国は暮らしと経済、外交などあらゆる分野で重大な岐路に立たされています。
九月十七日の日朝首脳会談によって、国交正常化交渉の道筋が開かれました。同時に、北朝鮮による拉致・核開発問題が明らかになり、この解決が緊急の課題となっています。
さらに、アメリカによるイラクへの先制攻撃問題は、世界の平和にとって重大な脅威となっており、わが国が国際社会において道理ある立場を貫けるかどうかが鋭く問われています。そして、わが国経済は、いまや破局の瀬戸際にあるといっても差し支えありません。
国民の暮らしと中小企業をおしつぶす政策をつづけて破局に至るのか、それとも「国民生活の再建なくして日本経済の再建なし」の立場で、経済政策の転換をはかるのか、ぎりぎりの選択が迫られています。
私は以上のような認識から、以下いくつかの点について質問します。
まず第一は、北朝鮮との国交正常化交渉問題についてです。
これまで、日朝間には、国交はおろか、交渉ルートもありませんでした。そのため、日朝間の紛争問題――たとえば、ミサイル、拉致問題、植民地支配の清算などについて、これらを話し合いによって解決するのではなく、たとえばテポドン問題などがおこったときは、双方とも軍事的対応でこたえるという一触即発の危険な状況がつづいていました。
私たちは、北朝鮮の異常性、無法性についてはよく知っていました。
たとえば、七〇年代はじめの金日成にたいする個人崇拝のおしつけや、一九八〇年代に北朝鮮によっておこされたラングーン事件、日本漁船拿捕(だほ)事件、大韓航空機爆破事件などについても、きびしく批判し、その結果、朝鮮労働党とわが党とは断絶状態にあります。
しかし、そういう無法な国であり、両国間にさまざまな問題があるからこそ、一九九九年の国会で政府間の対話のルートを開き、交渉によって解決すべきだと提案したのであります。交渉なしには問題の解決をはかることはできないと考えたからであります。
日朝間の諸懸案を包括的にとりあげて話し合うための日朝首脳会談が発表されたとき、私たちが、このトップ同士の会談の決断を「歓迎し、協力を惜しまない」と述べたのは、こうした立場からであります。
首脳会談の中で、北朝鮮が拉致の事実を初めて認めました。あまりにも衝撃的でした。
ご家族のみなさんの悲しみは察するにあまりあります。拉致は絶対に許すことのできない国際犯罪であります。北朝鮮が拉致を認めたことは、真相解明への一歩ですが、これですむ話ではありません。ほかに拉致はないのか、責任者は誰なのか、拉致された人がどういう扱いを受けていたのか、生存が確認されていない方々の消息は、などの真相の全面的な究明が必要であります。さらに、責任者の処罰、被害者への謝罪と補償などを、今後の交渉の中で強く求めてゆくべきだと考えますが、総理の見解を求めるものであります。
北朝鮮が核開発をおこなっていたことを認めた、と米政府が発表しました。これは、世界とアジアの平和の流れに背くものであり、被爆国日本の国民の願いにも、背くものであります。さらに、北朝鮮がみずから合意した一九九四年の「米朝枠組み」合意や北朝鮮自身が加盟している核不拡散条約の条項にも反します。核問題についての「国際的合意を順守する」と明記した、日朝平壌宣言にも違反するものであります。
私たちは地球上からすべての核兵器をなくすべきだという立場であり、北朝鮮の核兵器開発も絶対に認めるわけにはいきません。
再開される国交正常化交渉の中で、核兵器開発計画の即時中止と、国際機関による査察の受け入れを強く求めるべきであります。総理の見解を求めます。
日朝関係が対立から協調へ転換することは、北東アジアの平和はもちろん、世界の平和にとっても、大きな意味をもっています。わが党は、そのためにひきつづき全力を尽くすことを表明するものであります。
つぎに、日本経済と国民の暮らしについてであります。
総理、あなたは総理就任以来四たび、本会議において所信を述べられました。そのたびに「不良債権を処理する」といい、今度はそれを「本格的に加速する」といわれました。日本共産党は、この不況下でそんなことをすれば、大量の倒産と失業を生み、景気を悪くして、ますます不良債権を膨らませることになると指摘してきました。
事実この一年余の間に、十兆円の不良債権が処理されましたが、新たに二十兆円の不良債権が発生しました。結局、総額は、三十二兆円から四十二兆円に増えたのであります。あなたは、この事実を認めますか。そしてなぜ、処理しても処理しても不良債権が増えたのだと思いますか。経済産業省の事務次官でさえ十月三日の記者会見で「デフレ状況が続けば続くほど不良債権が新たに発生してくる。その発生した不良債権がまた経済の足を引っ張るという悪循環プロセスに入っているわけです」と述べています。これが実際ではないのですか。
小泉内閣が不良債権処理を強引におしすすめたこの一年半の間に、国民生活はいったいどうなったか。あなたは昨年秋の臨時国会で「目先の動きに一喜一憂するような態度と決別しなければなりません」と述べました。私は、一つでも喜ぶことがあるか、憂うべきことばかりではないかと追及したことを思い出します。
雇用はどうでしょう。企業倒産は年間二万件をこえ、完全失業者は三百六十一万人となり、この一年間で二十五万人も増えました。
国民の収入はどうでしょうか。倒産とリストラ、賃下げでこの一年間に雇用者所得は九兆円も減ったのであります。住宅ローンのある世帯では、家計に占めるローンの比率は急上昇しました。これらが国民経済の六割を占める個人消費を引き下げることになるのはあまりにも当然であります。第一生命経済研究所によるとサラリーマン世帯の消費水準は一九九六年を一〇〇とした場合、今年一〜六月の平均は九四・六にまで落ちたのであります。
総理はこうした動かしがたい事実について、どのように認識しておられますか。国民の状態が悪化したことについて重大な責任があるとは思わないのですか。
私には、総理に、国民の状態が悪化していることに対する認識があるとはとうてい思えません。なぜなら、そうした認識がもしあるなら、医療、介護、年金、雇用保険など、社会保障のあらゆる分野で、三兆二千四百億円もの負担増を強いて平気でいられるはずはありません。そのうえ、配偶者特別控除や特定扶養控除の廃止・縮小、消費税の免税点の引き下げ、赤字の企業からも税金をとる外形標準課税を検討するなど、とうてい考えられないからであります。
国民のどこに、こうした負担に耐えられる余力があるとお考えですか。
たとえば、特定扶養控除は、もともと高校生、大学生をかかえている世帯では、教育費の負担があまりにもたいへんなため、この世代の子どもを持つ世帯の税負担を少なくするために設けられたものです。デフレ下のいま、ますますその役割が大きくなっていますが、総理はこうした控除は不要と考えているのですか。
多額の負担増が、所得減少のもとですすめられればどうなるか。とどまるところを知らない景気悪化へ導くことは、あなたも閣僚だった橋本内閣の九兆円負担増をみるまでもなく、明らかではありませんか。あなたは同じ轍(てつ)を踏み、二度も国民に犠牲を強いるつもりですか。
総理は、雇用と中小企業にセーフティーネット(安全網)を準備するともいいます。不良債権処理の強行で、大量の倒産と失業をつくり出しておきながら、何がセーフティーネットでしょうか。
わが党は、この間、雇用問題について繰り返し提案をしてきました。昨年の臨時国会でも、解雇を規制すること、サービス残業をなくして雇用を拡大すること、失業者の生活保障をおこなうこと、そして、政府の責任で雇用を拡大することなどであります。
しかし、そのいずれの対策も、政府はなおざりにしてきました。それだけではありません。「雇用におけるセーフティーネットの中心的役割を果たしている」と、政府がみずから言ってきた雇用保険についてまで、その役割を低めてきたのであります。
完全失業者のうち、失業給付を受けている人はわずか二割。五割の人が無収入であります。一九九九年度版「労働白書」は、雇用保険の役割をつぎのように述べていました。
「消費の減少による景気の落ち込みを抑制するマクロ経済効果と、失業中の家計を下支えする効果があり、安定した生活のもとでの、求職活動を可能にすることにより、就職を促進させること(にある)」
ところが、政府がこの間やってきたことといえば、失業率が高まるに従って、雇用保険制度を改悪して給付を減らすことでした。一九九九年度の完全失業率は4・7%、完全失業者は三百二十万人でした。今年度は、直近の八月で5・4%、三百六十一万人と、完全失業率も完全失業者も増えています。
ところが、雇用保険の給付額は一九九九年度の二兆三千二百五十七億円から、年々減らされてきました。今年度は一兆七千二百十九億円と、実に六千億円も少なくなっているのであります。そして、今度また、二千億円もの給付を削減しようというのですから、セーフティーネットの拡充どころか、政府の責任放棄そのものではありませんか。
給付を減らせば、早く就職に結びつくなどという言い訳は通用しません。現実に失業は増えており、失業保険をもらえない失業者はさらに増えているのであります。
わが党は当面、少なくとも失業率が3%程度の水準に戻るまでの緊急措置として、雇用保険の給付期間をせめて一年間まで延長し、雇用保険が切れた失業者への生活保障制度を創設すること。臨時のつなぎ就労の場を自治体がつくることなどを、提案するものであります。総理の真剣な検討を求めます。
雇用の問題で、とくに重要なのが特別に高い若者の失業率と就職難であります。なかでも、高校生の求人倍率は過去最低の〇・五倍と深刻な状況にあります。高校生からは「三年間何のために勉強してきたのか分からない」「もうフリーターでもいい」などの悲痛な声があがっています。就職難は、学生の学ぶ意欲、働く意欲を減退させ、若者の将来を閉ざすことにつながりかねないのであります。
未来を担う若者の就職難は、将来の日本社会にとってもゆゆしき問題です。新規採用の抑制は、仕事や技術が伝承されないなど、さまざまなゆがみをもたらしています。政府は、若者の就職難を日本社会の未来にかかわる問題として位置づけ、本腰を入れた対策に乗り出すべきではありませんか。
もう一つが、中小企業の問題であります。
総理、あなたは所信表明で、東大阪市と東京・大田区の中小企業を例に、日本の製造業、なかんずく中小企業の潜在力について述べられました。しかし、そんなことはあなたに、しかも「いま」言われなくても、何年も前から分かっていることです。いま問題なのは、小泉内閣の誤った経済政策のために、「国民のたゆまぬ努力で培われた潜在力」が失われようとしていることなのであります。
いま中小企業をめぐって何が起きているか。小泉内閣による金融検査マニュアルによって、都市銀行は金利引き上げをおしつけてくる。東京商工会議所の調査では、実に六割の企業がそうした要請を受け、そのうち、75%が都市銀行によるものだったと答えています。この圧迫は、この四月以降、徐々に信用金庫・信用組合にまで広がっており、中小零細企業は、文字通り経営の瀬戸際にたたされています。
さらに、大田区では昨年、「大栄」「東京富士」という二つの信用組合が破たんさせられました。この二つの信組の融資先は、三千件の中小零細企業、およびこれらの家族など八千件の個人でした。この破たん処理で、件数にして八百四十九、債務は39%の三百四十九億円がRCC(整理回収機構)に送られました。当初、50%から75%が送られるといわれていたのを、「地域経済を守れ」という区民をあげての大運動でこうした範囲にとどまったのであります。
政府の誤った金融政策による被害を、住民の団結ではね返したのです。総理、大田区の中小企業についてうんぬんするなら、政府がいかにひどいことをしたか、そして、誤った金融政策を改め、こうした中小企業の置かれている苦境を打開する方策をこそ、述べるべきではなかったのですか。
日本共産党は、地域経済と中小企業が置かれた実態をふまえ、金融機関に、地域の住民や事業者の金融上の要望にきめ細かに対応することを義務づける「地域金融活性化法案」を提案しています。政府としてもこうした対策をとるよう求めるものであります。加えて、埼玉県で実施され、京都府や京都市においても実施されている公的資金による保証つき融資制度についても、国として検討すべきだと思いますが、答弁を求めます。
いま一番求められていること、それは日本経済の六割を占める経済の主人公、国民のふところを直接応援する政策であります。
日本共産党は、そのために、(1)社会保障による三兆円負担増を中止する、(2)国民や中小企業への増税はやめる、(3)「不良債権処理」の名による中小企業つぶしの政策を転換する、(4)無法なリストラをやめさせ失業者の生活を保障する、この四点を緊急に実施すべきだと考えますが、総理の見解をうかがいたい。
総理はよく「自立自助」、すなわち国を頼るな、自分で立てといいます。それをいうなら、大企業と大銀行にいったらどうですか。みずから立とうにも立てないお年寄りや障害者、額に汗して働く、国民や中小企業に光を当てることこそ、政治の果たすべき責任ではありませんか。
つぎに、原発問題についてであります。
最近明らかになった、東電など原子力発電所の損傷隠しの問題は、わが国のエネルギー政策の根幹にかかわる重大問題でした。この問題の重大さは、わが国の原子力発電所の安全性が、たった一人の労働者の善意と勇気によって、かろうじて担保されたという驚くべき実態にあります。
そこで二点うかがいたい。
こうした実態が、長年放置されたままであった原因の一つに、原子力発電を推進する経済産業省の中に、規制を担当する保安院を置くという、矛盾したあり方があったとは思いませんか。独立した原子力規制機関を確立すべきだと考えますが、いかがですか。
もともとプルトニウム循環方式は、その危険性からアメリカ、ドイツ、フランスなど国際的にも放棄された方式であります。これに固執することは、危険をいっそう広げることになります。福島県や新潟県がプルサーマル計画を白紙撤回した今日、政府もこの方式に固執すべきではないと考えますが、総理の決断を求めるものであります。
最後に、アメリカのイラク攻撃について質問します。
アメリカのブッシュ政権は、イラク攻撃の権限を大統領に与える上下両院での決議をうけて、国連安保理に新たなイラク決議の採択を迫り、戦争推進に突き進もうとしています。
しかし、アメリカは、イラクを武力攻撃する大義名分や正当性をなにひとつ世界の前に示すことができません。
第一に、9・11テロとイラクのフセイン政権を結びつける証拠は、アメリカが血眼になって探しても、なにひとつ示すことができないこと。
第二に、イラクが大量破壊兵器を所有しているという明確な証拠もなにひとつ示されていないことであります。
たしかに、イラクがこれまで国連の査察を拒否してきたのは事実です。わが党は査察を受け入れるべきだという立場ですが、しかし、これも交渉によって解決すべきで、武力攻撃を正当化する理由にはなりません。しかも、九月末の国連との協議で、一部のイラク大統領施設を除くすべての施設で無条件に査察を再開することで合意しました。
さらに、いまわが党の緒方参院議員らが中東諸国を歴訪中ですが、イラク国民議会の議長と外務省の第一政務局長との会談で、イラク政府は八つの大統領宮殿を含むすべての施設、場所への査察を無条件で認める立場を表明しました。
アメリカのイラク攻撃には、もともとまともな論理はありませんでしたが、アメリカが持ち出した理屈からいっても、その根拠を失いつつあります。
こうしたなかで、アフガンへの報復戦争の際には、アメリカの圧力でしぶしぶ賛成した国を含めてイラク攻撃反対、国連憲章、国際ルールを守れという声が澎湃(ほうはい)としてわきおこっています。
たとえば、十月十六、十七の両日、世界の百カ国以上が参加する非同盟諸国会議の要請で、国連安保理の公開協議がおこなわれました。同会議の議長国である南アフリカは、「国連の査察を受け入れるといっているイラクへの攻撃は国連憲章違反である」と明言しました。
小泉総理、あなたは所信表明演説において、イラク問題では「国際協調が重要」「国際社会と協調しつつ外交努力を継続する」と述べました。そうであるなら国際的なルールに立脚し、国際社会のこうした平和の流れと協調するべきではありませんか。どのような外交努力をおこなうつもりか、具体的にお答えください。
つぎに、イラク攻撃とかかわってアメリカの先制攻撃戦略について総理の見解を問いたい。
八月十五日に発表されたアメリカの「国防報告」と九月二十日に発表された「国家安全保障戦略」、いわゆるブッシュ・ドクトリンには、これまでと違った新しい踏み込みがいくつかあります。
その最大の特徴が先制攻撃戦略です。国連憲章は、「武力攻撃が発生した場合」だけしか、自衛権の行使は認めていません。その場合も国連安保理が適切な措置をとるまでのあいだという限定つきであります。
アメリカが攻撃されてもいないのに、あいつは気にくわないといって先制攻撃をする、政権まで転覆させる。もし、こんなことがまかり通れば、二つの世界大戦を通じ、多大の犠牲のうえに築きあげた、戦争の違法化と紛争の平和的解決という国際ルールを根本からふみにじり、世界は無法地帯と化してしまうではありませんか。
この点について総理はどう考えますか。
アメリカの先制攻撃戦略にキッパリとした反対の態度をとるべきだと考えますが、いかがですか。もし、反対できないのなら、その論拠を具体的に示してください。
万一、アメリカがイラク攻撃をした場合、それに日本が軍事協力をおこなうことは、日本自身が先制攻撃を容認する無法国家の仲間入りをすることになります。無法な先制攻撃への協力と、そのための新たな立法措置は一切おこなわないことも合わせて明らかにすることを求めるものであります。
さらに、継続審議となった有事法案については、さまざまな修正の議論がありますが、アメリカの海外での戦争に日本が参戦し、国民の権利と自由を奪う本質にはなんのかわりもありません。廃案を強く求めるものであります。
冒頭述べたように、今国会は、わが国が暮らしと経済、世界と日本の平和、外交などあらゆる分野で重大な岐路にたたされているなかで開かれています。私は本院が、真に国民の負託にこたえ徹底的な審議をおこなうことを強く求めて質問を終わります。
二十三日に日本共産党の市田忠義書記局長が行った参院本会議での代表質問に対する小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次の通り。
一、(拉致問題)政府として、拉致問題の解決を国交正常化交渉の最優先課題として取り上げていく。事実解明に全力をあげ、被害者の家族を伴った帰国の早期実現に取り組む。今後、北朝鮮にいかなる対応を求めるかは、国交正常化に向けた過程で総合的に検討していく。
一、(核開発問題)北朝鮮の核開発は、国際的な平和と安定、核不拡散体制にかかわる問題であり、わが国自身の安全保障にとっても重大な懸念だ。日朝平壌宣言で、北朝鮮が関連するすべての国際的合意を順守するとしたことをふまえ、日米韓三国の連携のもと、国交正常化交渉等の場で、北朝鮮にこの宣言を誠実に実施することを強くはたらきかけていく。
一、(不良債権残高の増大)不良債権残高の増加は、厳しい経済情勢の影響があった一方、金融庁の特別検査などで不良債権の徹底的な洗いだしを行ったことによるものだ。
一、(税制見直し)配偶者特別控除や特定扶養控除は、税制の空洞化の是正、経済社会の構造変化への対応の観点から、廃止・縮減をはかる方向で検討していく。
消費税の免税点制度は、消費税制度全体に対する国民の信頼性や制度の透明性を向上させる観点から、抜本的な改革をはかる方向で検討していく。
法人事業税の外形標準課税は、税負担の公平性の確保、地方分権を支える基幹税の安定化の観点から、税制中立の考え方のもと導入をはかっていきたい。
一、(不況下で国民負担増や庶民増税、不良債権処理を加速させる問題)社会保障制度は、急速に少子高齢化が進展するなかで、制度を持続可能で安定的なものとするために、給付と負担の見直しをはじめとする制度改革が避けられない。
税制改革は、抜本的改革に取り組み、多年度税収中立の枠組みのもと、一兆円を超える規模の減税を先行させる。
不良債権処理の加速は、日本経済の再生に必要なものであり、雇用や中小企業への影響には細心の注意を払い、セーフティーネットには万全を期す。
一、(雇用保険改悪)雇用情勢は厳しい状況が続き、雇用保険受給者も増加し、当面する財政破たんを回避し、将来にわたり雇用のセーフティーネットとしての安定的運営を確保するためには、給付と負担の両面にわたる見直しを行うことが必要だ。
雇用保険の給付日数延長は、失業者の滞留を招く恐れがあり、企業ごとに保険料を異ならせることは、雇用保険がすべての労使の共同連帯による保険制度であることから、適切でない。
一、(学費緊急助成制度・住宅ローンのつなぎ融資)無利子で貸与する緊急採用奨学金を年間を通じて随時受けつけており、現在のところ希望者に貸与することは十分可能だ。失業者の住宅ローンの負担軽減は、住宅金融公庫の返済期間の延長などの特例措置の周知徹底をはかっていく。
一、(若年者の雇用対策)新規高卒者に対する求人改革や就職面接会などの就職支援を行っている。インターンシップなど、在学中からの職業意識の啓発やトライアル雇用、職業訓練の実施などを講じている。
一、(金融検査マニュアルと中小企業金融)やる気と能力のある中小企業が、破たんする事態を回避するため、月末をめどに、信用補完制度の充実など実行ある資金供給円滑のためのセーフティーネット策を取りまとめる。
一、(共産党提案の地域金融活性化法案のような対策について)金融機関の融資業務等は、基本的には自主的な経営判断にしたがって行われるべきであり、共産党提案のようになんらかの一律の基準に基づいて各金融機関の活動を評価すること等については、慎重に 考えるべきものと考え る。
一、(中小企業対策としての公的資金借り換え制度の検討)借り換え制度は、地方自治体の融資にかかわる債務の弁済を促進し、中小企業の再生を促すため地域の実情に応じ実施されているものと承知している。
一、(原子力の独立した規制機関について)原子力安全規制については、経済産業大臣が一次規制を実施し、原子力安全委員会が客観的中立的立場から、再度安全性を確認するという現在のダブルチェックの体制が有効に機能するものと考えている。今般の事案が、原子力の安全に対する信頼性を損なったことを重く受け止め、申告制度の改善など再発防止のための対策を総合的に検討し、早急に改善策を実行に移していく。
一、(核燃料サイクル政策)核燃料サイクルの確立は、資源に乏しい我が国の原子力の開発利用において、重要な政策に変わりがない。今後、安全性の確保を大前提として、プルサーマルをはじめとする核燃料サイクル政策に対する国民の信頼回復と理解に向けて更 なる努力が必要と考え る。
一、(イラク問題)重要なのはイラクが実際に、査察を即時無条件無制限に受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連安保理決議を履行することであり、このため必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきであり、わが国としても今後の情勢をよく見極めながら国際協調を基本に外交努力を継続していく。
一、(米国のイラク攻撃について)米国による軍事行動を予断することは、現在の時点で差し控えたい。
一、(米国の国家安全保障戦略に対するわが国の立場)政府としては、米国がテロや大量破壊兵器の拡散といった冷戦後の新たな脅威に対して、断固たる姿勢で臨み国際社会と連携しつつ強力なリーダーシップを発揮するという決意を同戦略において示している点を評価している。なお、同戦略は脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するという話ではなく、先制を侵略のための口実としてはならない旨を明らかにしている。いずれにしても米国は国際法上の権利、および義務に合致して行動するものと考えている。
一、(有事関連法案)継続審査となっている有事関連三法案については、国会における議論を通じて、幅広い国民の理解と協力が得られるよう努力していきたい。