2002年10月26日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 最近、知的所有権の重要性が強調されるのに、特許審査の人員が少ないそうですが…。(千葉・一読者)
〈答え〉 知的創造物の創作者に付与される知的所有権のうち、産業技術上の発明などにかかわる権利は工業所有権とよばれ、一定期間の独占権などの保護が与えられます。
工業所有権は、自然法則を利用した新規で産業上有用な発明への「特許権」や、物品の形状・構造・組み合わせにかかわる考案への「実用新案権」、デザインなどの「意匠権」、商品などを識別する「商標権」からなります。日本では経済産業省の外局である特許庁の登録で、保護されます。
特許庁の審査官は、出願された発明の実用性や新規性、進歩性などを審査し、登録に値するかどうかを判断します。研究・開発競争が強まり、特許権などの「早い、強い、広い」保護が求められていますが、日本は人員体制で遅れをとっています。
例えば一九九八年度から二〇〇〇年度までの三年間で、アメリカの審査官は二、五九四人から三、一四三人に、21%増え、欧州特許庁も二、二一六人から二、七六七人に、25%増えています。しかし日本は二〇〇二年度までの五年間に、一、〇七八人から一、一〇五人へと、2・5%の微増にとどまります。
特許審査の請求件数が九八年度〜二〇〇〇年度に二十万七千件から二十六万三千件へと27%増えるなか、最初の結果通知までの期間が九九年の十九カ月から二〇〇一年は二十二カ月に伸びるなど、実務の遅れも出ています。政府は財団法人の工業所有権協力センター(IPCC)に外注を増やしていますが、同センター職員の過半数が大企業からの出向で、特許情報の秘密保持の点などから問題です。
日本共産党は、欧米のように国が責任をもって審査官の増員をはかることを要求していますが、政府は常勤国家公務員の上限を定めた「定員法」などを理由にして、本格的な増員に手をつけていません。
(水)
〔2002・10・26(土)〕