2002年10月31日(木)「しんぶん赤旗」
「聴覚障害者が裁判を受けるとき、手話通訳費用は国が負担してください」。三重・伊勢市の高校二年生、河村博文さん(17)は三十日、日本共産党の瀬古由起子衆院議員とともに、森山法務大臣に手紙を渡しました。
手紙は同日、瀬古議員が法務委員会の質疑で読みあげたものです。
瀬古さんとの出会いは、演説をきき「この人なら」と思った博文さんが、国会を訪ねたことがきっかけ。「とにかく話をきいてほしかったんですが、国会でとりあげられうれしい」。
「なぜ障害者というだけで裁判のたびに二万円もの費用を負担しなければいけないのか。憲法に保障されている裁判を受ける権利のハードルを高くしている」。博文さんは、家族の裁判を通じて、確信しました。
九九年九月、弟の文弥くん(当時小学六年)が「体験学習」中に、ぜんそく発作で死んだのは、学校に過失があった…。博文さんと両親は、昨年五月に伊勢市を相手どり津地裁に提訴しました。
たくさんのハードルがありました。聴覚障害者の両親と、当時中学二年生だった博文さんを相手に、教育委員会や校長は、「横柄で不誠実な態度」をとりました。夜中に遺骨を抱えて泣く母を見て「なんとかしたい」と思いながらも、学校、社会が信じられなくなり、絶望しました。
そのとき、自宅を訪ね「真実を究明しましょう」と親身になってくれたのが日本共産党の松浦みさ子市議。信頼できる弁護士にも出会いました。
「弱いものが強いものにたちむかうには勇気が必要だった」。お金がめあてだという中傷もありました。でも、家族の思いは、あの日何がおこったのか、真実を知りたいということ。
両親のため裁判では、手話通訳をつける必要がありました。しかし、裁判所に相談しても「前例がありませんから、弁護士と相談してください」といわれました。これまで九回、毎回二万円の負担です。
森山大臣は、瀬古議員の質問に「民事訴訟法による救済制度がある」と、答弁しましたが、同制度はきわめて限定した人を対象としています。瀬古議員は「お金のあるなしにかかわらず、障害者ゆえのバリアーを取り除いてほしいということだ」とただしました。
緊張した面持ちで直訴した博文さんは「裁判を通じて、個人の力では得ることもできなかった真実が明らかになり、裁判の魅力を実感した。それだけに障害者が裁判をうけにくい現実があるのは残念」と。障害者が気軽に相談できる弁護士が将来の夢です。