2002年11月9日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 小泉内閣が「加速」しようとする不良債権処理が、アメリカの要求とはどういうことですか。(東京・一読者)
〈答え〉 小泉内閣の不良債権「早期最終処理」は、昨年三月十九日の日米首脳会談で森喜朗首相(当時)が公約したのが始まりです。日本の不良債権処理への姿勢を懸念して「不良債権問題は可能な限り処理にあたってもらいたい」とクギをさすブッシュ米大統領に、森首相は「不良債権処理が最大のネック」「半年で結論を」と答え、共同声明にも「不良債権に効果的に対処」すると明記しました。
小泉内閣発足後の六月三十日の日米首脳会談では、「経済政策はできるだけ大胆に」と念押しするブッシュ大統領に、小泉首相は「不良債権の問題は米国の意見も聞いて成功させたい」と答えています。米大統領は今年一月十七日の小泉首相あて親書でも、不良債権の市場への売却が進まないことに懸念を表明しました。
もともと米政権には、米国流の弱肉強食社会が最上だという考えがあり、各国に弱者切り捨ての経済手法を押し付けてきました。日本に不良債権「最終処理」を迫るのもこうした押し付けの一つといえます。
同時にアメリカが日本の不良債権問題を重視するのは、▽米国債の海外保有分の四分の一を占めるなど、赤字のアメリカ経済の支えとなっている日本からの資金の流れを維持しなければならない▽アジア重視の米世界戦略とのかかわりで、経済の立ち直りが遅れ、アメリカの利益を確保する「同盟国」の役割も果たせない日本は不安材料―などの事情が指摘されています。旧・日本長期信用銀行(現・新生銀行)を十億円で買収したリップルウッドなど、米系投資会社に不良債権ビジネスの機会を与えるねらいもみられます。
いずれにせよ、米政権の要求は、日本経済や国民生活に責任を負う立場のものではありません。その言いなりに不良債権処理を「加速」する小泉内閣の害悪は重大です。
(博)
〔2002・11・9(土)〕