2002年12月12日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 法科大学院というものを設立すると聞きましたが、何をめざしているのですか(東京・一読者)
〈答え〉 裁判官・弁護士・検察官ら法曹養成の中核的教育機関となる法科大学院(ロースクール)の設置を定めた法科大学院法と、その修了者らを対象に新しい司法試験を導入する司法試験法改正が、十一月の国会で成立しました。法科大学院は二〇〇四年の開設をめざし準備がすすめられています。
平等・公平の原則が貫かれた司法試験制度と、裁判官・検察官・弁護士の志望者が同じ場で学ぶ司法修習制度は、戦後半世紀以上にわたり、日本の法曹養成制度の二つの柱として、司法の民主化と良質な法律家の創出に大きな役割を果たしてきました。
その一方、今日では、司法試験出願者が四万五千人を超えるなかで、合格者はわずか千二百人という異常なものになっています。大学に籍を置きながら司法試験の予備校に通うダブルスクール現象が広がり、志望者は法律や判例の膨大な集大成を習得することに多くの時間を奪われて、教養を深めたり人権感覚を磨く余裕も失うなど、改革が求められていました。
法科大学院は、司法試験という「点」のみの選抜にかわり、少人数で密度の高い教育によって、豊かな人間性や高い職業能力・職業倫理を備えた多数の法曹を育成するというのが理念ですが、その実現には多くの課題が残っています。
新しい制度の趣旨を実らせるためには、地方への法科大学院の適正配置を進める国の施策が重要です。また現行司法試験に似た予備試験の合格者に新司法試験への受験資格を与える道を残しましたが、この部分が肥大化すると法科大学院設置の理念がこわされるおそれも指摘されており、慎重な運用が求められます。資力のない人でも大学院に進学できるよう、抜本的な奨学制度の拡充などの財政支援が必要です。
(清)
〔2002・12・12(木)〕