2002年12月14日(土)「しんぶん赤旗」
自民、公明、保守の与党三党による来年度の税制「改正」の大綱がまとまりました。その中身は一言でいって、”黒字の大企業には減税、国民には増税”です。社会保障の改悪などで三兆円を超す負担増を国民に強いるだけでは足りず、増税まで強いる小泉内閣・与党では、日本経済の将来は真っ暗です。(石井光次郎記者)
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与党三党が合意した税制「改正」の”減税”項目は、黒字の大企業への優遇税制が最大の柱です。もうけている企業向けの”減税”だけで全体の減税(二兆四千億円)の半分になります。不況に苦しむ国民や経営がきびしい中小企業には縁遠い中身です。
その中心が「研究開発税制」と「設備投資税制」です。合計で一兆二千億円。
研究開発税制は、研究開発への支出の一定部分を法人税額から割り引いて優遇する制度です。現行は、「増加分」が対象でしたが、支出総額に拡大します。
設備投資税制は、期間を区切って、IT(情報技術)分野の設備投資の一定割合を法人税額から差し引いたり、特別償却を認めて税制上優遇する制度です。
政府は「二十一世紀のわが国を支える産業・技術の創出につながる」といっていますが、日本の産業の技術を支えてきた多くの中小企業にとって、設備投資や研究開発どころではないというのが実態です。
恩恵を受けられるのは一部の黒字企業にすぎず、強者をますます強くするだけです。
この他、”減税”項目には、相続・贈与税の最高税率(現行70%)を50%に引き下げたり、金融・証券税率の引き下げなど、大資産家優遇策が並んでいます。
黒字の大企業に税金を負ければ、その分どこかで穴埋めをしなければなりません。その穴埋め分は国民や赤字に苦しむ中小企業にかぶさります。
まず、個人所得税の増税です。専業主婦がいる世帯に配慮した配偶者特別控除(配偶者控除に三十八万円を上乗せ)が〇四年一月から廃止されたら、七千億円の増税です。政府は、不景気による所得減少と大金持ち減税で所得税収が減ったのに、「働く人の四人に一人が払っていない」などと低所得者を攻撃。各種控除を縮小して課税最低限を引き下げるねらいです。
中小企業もねらい撃ちです。これまで消費税を払わなくてよい免税点を売上高三千万円から一千万円以下に引き下げます。大手量販店などときびしい競争を強いられる中小企業に四千億円の増税です。さらに納税事務を軽くするための簡易課税制度適用基準も引き下げ、二千億円の負担を強います。
このほか、資本金一億円超の大企業に限る形で、赤字企業にも課税する外形標準課税の枠組みが導入され、将来、中小企業にも拡大される危険が広がりました。
発泡酒やたばこも合計二千九百億円の増税で、国民、中小企業の負担増は約一兆五千億円になります。
数年かけてやる本格的な「税制改革」の第一歩――。竹中平蔵金融・経済財政担当相は、〇三年度税制「改正」について、十三日の記者会見でこうのべました。「第一歩」という言葉が不気味に響きます。政府税調が十一月にまとめた答申も来年度の「改正」を「第一歩としての改革」としていました。
その答申は、国の財政が厳しいから「租税負担水準の引き上げが不可避である」と明快です。小泉内閣がめざす「税制改革」は来年度から四年間。〇六年度までのメニューは庶民増税一色です。
個人所得税の各種控除を縮小する政府の方針は変わりません。今回廃止が見送られた特定扶養控除のほかに、「引き続き検討すべき項目」として老年者控除、公的年金等控除、退職所得控除、給与所得控除をあげています。
消費税も税率引き上げをにらんだ動きが活発です。「今後、その役割を高めていかざるを得ない」と政府税調答申は税率引き上げをいい、今回の中小企業向けの特別措置縮小や内税への価格表示統一は、税率引き上げに向けた条件整備としています。財界から税率二ケタへの引き上げ案がでるのも偶然ではありません。
”私が首相のうちは消費税は上げない”といっていた小泉首相自身が、「消費税が反対なら、年金の議論はできない」と経済財政諮問会議(十二月五日)で明言しています。