2002年12月15日(日)「しんぶん赤旗」
<問い> 東電などの事故隠し発覚のあと、政府はどんな不正防止策を出していますか。(新潟・一読者)
<答え> 自主点検で原子炉の炉心隔壁(シュラウド)ひび割れなどを発見しながら、報告せずに稼働を続けた東京電力などの事故隠しは、原発政策の根本的欠陥を浮き彫りにしました。「不正再発防止」などとして政府が提出した原発関連二法案は、十二月十一日に与党や民主党などの賛成で成立しましたが、安全点検でも業界まかせを続けるなどの根本にかわりはなく、検査体制の強化に逆行するものもあります。
まず、電力会社の任意だった自主検査を「定期自主検査」とし、記録保存などを義務付けました。自主検査で発見されたひび割れなどの”不具合”は、経済産業省が定める「維持基準」を満たさなくなると見込まれる時期などを「評価」し、記録・保存するとしています。しかし自主検査を法で定めたといっても、電力会社らに検査をまかせている問題性はかわりません。検査結果や評価結果の報告・公表義務もありません。
また、新設される独立行政法人・原子力安全基盤機構が、電力会社の検査体制を審査するとしています。原子力安全基盤機構には、いままで原発関連の三つの財団法人に行わせていた業務が移管されますが、旧財団法人への電力会社や原発メーカーからの寄付金・出向社員なども引き継ぐことになります。資金や技術者の大半が審査対象となる業界の丸抱えでは、審査の独立性・中立性は保障されません。
この原子力安全基盤機構には国が実施している検査のうち、材料・機器の仕様や検査データの妥当性など「専門的技術的な部分」も移管されます。この結果、国の検査は現状よりもいっそう表面的なものになります。国の責任を放棄して、実質的な検査は業界丸抱えの独立行政法人と、電力会社・原発メーカーらに委ねる、癒着の産物というべきものです。
(水)
〔2002・12・15(日)〕