2002年12月18日(水)「しんぶん赤旗」
内閣府は十六日、将来に向けて消費税率引き上げの検討を求めるリポートを公表。小泉不況で税収減と財政難に拍車がかかるなか、政財界からせきを切ったように消費税率引き上げ発言が相次いでいます。
NHKの世論調査(十一月二十九〜十二月一日実施)によれば、景気をよくするため政府が力を入れるべき対策として、(1)雇用の安定20%(2)デフレを食い止める13%―に続き、(3)消費税引き下げを求める声が10%にのぼっています。
ところが、財界、政治家からは、消費税引き下げどころか税率アップの発言ばかりが聞こえてきます。十一月二十六日、日本経団連の奥田碩会長は「消費税を二〇〇四年度以降毎年1%ずつ上げれば、二〇一四年度に16%となった後は上げる必要がなくなる」と講演でのべ、消費税の段階的引き上げを提言しました。
「どうすれば社会保障給付や行政サービス水準を落とさずに財政面の破たんを回避できるか」と、大企業の社会保障負担をさらに軽減するねらいです。
経済同友会は五日、新しく創設する年金制度の財源として消費税を二〇一〇年度に14%にする案を発表。
財界からの提案に呼応するように、小泉純一郎首相は五日の経済財政諮問会議で、基礎年金の国庫負担を現行三分の一から二分の一に引き上げる財源として、消費税増税を示唆しました。諮問会議メンバーの奥田氏が、財源として「消費税が頭にあるのではないか」とただしたのに対し、首相は「消費税に反対なら年金の議論はできない。そういう議論も必要だ」と答えたのです。
自民党の青木幹雄参院幹事長は十七日、「いずれは議論をするときがくる」と発言。野中広務元幹事長も「消費税を2%ずつでも上げていって、これからの福祉を考える国民的コンセンサス(合意)をつくる努力をしなければならない」(十一日)とのべ、額賀福志郎幹事長代理も「だれかが将来の(社会保障を)負担しないといけないから、消費税は引き上げなければならない」(十六日)と講演で言及。保守党の野田毅党首も社会保障費を消費税引き上げで賄うことを主張しています。
政治家や財界人の消費税増税発言の口実として共通しているのは、社会保障を引き合いに出すことです。年金や高齢者医療などの給付水準を「将来にわたって維持する」ための財源にあてるというのです。
社会保障を預かる坂口力厚労相も、「高齢者医療や基礎年金を賄う財源を一般財源(税)でみるか、保険料でお願いするか決断しなければならない」(十二日)と言明しています。
年金の国庫負担の引き上げに必要な財源は、ムダな公共事業や軍事費を減らすなど予算の使い道を改めることで確保できます。社会保障の国庫負担を削減しながら、消費税を増税し庶民から取り立てる以外に財源がないという言い分は、国民生活を守る政府の責任を放棄するものです。
歴代自民党の経済失政のツケを、庶民に負担の重い消費税増税で安易に埋めようとする姿勢は許されません。(古荘智子記者)