2002年12月20日(金)「しんぶん赤旗」
昨年十二月に文化芸術振興基本法が制定されて以来、芸術・文化活動への公的支援をめぐって、二つの大きなできごとがありました。一つは、振興基本法にもとづく国の文化行政の「基本方針」の策定で、もう一つは、日本芸術文化振興会の独立行政法人化です。
国の文化行政の「基本方針」は、四月に文化審議会に諮問され、十二月十日に閣議決定されました。約五年にわたる文化行政の基本となります。文化審議会には多くの芸術・文化団体から「基本方針」に明記することを求めて、要望・意見が多数出されました。しかし、「基本方針」は、こうした意見は十分反映されませんでした。振興基本法を生かすためにも、出された要望・提案を実現させるとりくみが、今後ますます重要になります。
日本芸術文化振興会は、小泉内閣の「特殊法人改革」の一環として、独立行政法人化されました。昨年末に発表された政府の特殊法人「整理合理化計画」には、振興会が担っている芸術文化振興基金による助成や、国立・新国立劇場への政府の支援の「抑制」や「終了」が記されました。映画、演劇をはじめとした団体から、危ぐや反対の声があげられました。
独立行政法人は、政府が「中期目標」を決め、「評価」するなど、国から強い監督を受ける組織で、すでに独立行政法人化された国立美術館などでは、「実績評価」が始まっています。こうした「評価」は、芸術・文化活動の内容にたいする国の「介入」になることは明らかです。
文化庁予算は、八・三%増となりました。主には「アーツプラン21」を再編・統合した「新世紀アーツプラン」の創設によるものです。しかし、「新世紀アーツプラン」は、重点支援や事業支援という従来型の支援の延長となっています。そのため、分野によっての偏りがあり、現場の実情にあわないなどの問題も浮かび上がりました。
長引く不況で民間劇場の閉鎖が相次いで発表されるなど、芸術・文化活動をめぐる条件は厳しくなっています。それだけに、「新世紀アーツプラン」をはじめ、国の支援は現場の困難の解決に役立つものに切り替えていく必要があります。
七月、東京高裁で、撮影中に死亡したにもかかわらず、「労働者ではない」として、労災審査も受けられなかったフリーの映画カメラマンについて、「労働者である」と認めた画期的判決がうまれました。判決を受け、十二月には過労死認定も受けられました。また、芸能法人を他の法人と区別し源泉税を事前に徴収する不当な税制について、いよいよ政府が改正に踏み出しました。これも、長年の芸術・文化団体の運動が実ったものです。文化芸術振興基本法をよりどころにして、文化行政の転換をせまり、山積する諸課題を一つ一つ解決する施策の実現をはかることが必要です。
辻慎一・党学術・文化委員会事務局