2002年12月21日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 医薬品「総合機構」という法人の設立が強行されたようですが、どんな問題点がありますか。(東京・一読者)
〈答え〉 独立行政法人・医薬品医療機器総合機構の設置法案が十二月十三日、与党三党で可決強行されました。日本共産党などの追及で問題点が浮き彫りになり、他法案から切り離し審議されていたものです。
この「総合機構」は、認可法人・医薬品機構を母体に、国立の審査センターの業務と、財団法人・医療機器センターの一部業務を統合して設立されます。新法人は医薬品などの▽開発振興▽審査▽安全対策▽被害者救済―の四業務を一手にします。
薬害エイズ事件の教訓から、厚生労働省は一九九七年に、省内の研究開発部門と規制部門を分離したばかりです。開発振興と審査・安全対策を分離する教訓を投げ捨て、被害者救済まで一つにすることは、薬害根絶のとりくみへの逆行です。肺がん新薬の副作用事件が示す、ずさんな審査を増幅しかねません。
新法人は資金面でも製薬会社に依存し、職員らが機構と製薬会社を行き来することにも、法的規制がありません。製薬会社の手数料値上げで審査をスピードアップしますが、会社に迎合的な審査となりかねません。
新法人の母体となる医薬品機構は正式名称を「医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構」といい、被害救済が本来業務でした。スモン事件の被害者が国の責任を認めさせ、七九年に設立させた医薬品副作用被害救済基金が前身です。後の組織改編などで救済の弱まりが見られましたが、新法人は名称からも「救済」が消え、被害救済のいっそうの後退も懸念されます。
国会審議で追及を受けた坂口力厚労相らは▽研究開発部門の将来分離を検討▽製薬企業元職員の就職に制限を設ける―などを約束しました。開発振興の分離などを求める委員会決議も可決されました。これらを守らせ、被害救済や審査・安全対策を強化することが求められます。
(水)
〔2002・12・21(土)〕