2003年1月8日(水)「しんぶん赤旗」
年末から年始にかけて消費税率引き上げをねらう発言が相次ぎ、政府と財界が消費税増税に向けていっせいに走り出しました。
昨年暮れには、小泉首相が「消費税議論を大いに検討してもらいたい」とのべ、年明けには日本経団連が16%への引き上げを提案。六日には、財界三団体がそろって消費税引き上げの必要性を強調し、七日には多数の閣僚が発言しました。(表参照)
こうした動きにたいし、各地で「増税許すな」の運動が広がっています。消費税をなくす会は、正月早々から各地の神社などで宣伝行動。初もうでに訪れる人々に「政府・財界のねらう大増税を許さず、減税を実現する年に」「消費税を3%にもどし、景気回復を」と訴えました。署名に応じる人からは、「苦しいときこそ、増税でなく、暮らしを良くする政治をしてほしい」「ニュースを見て驚いている。消費税を考えて買い物も控える。これ以上の増税は困る」などの声が寄せられました。
政府は、増税、医療費値上げや年金給付の引き下げなど、四兆円もの負担増を国民に押しつけています。長引く不況のもと、庶民の暮らしは冷え切ったままです。かりに消費税を10%にすると、十二兆五千億円もの新たな負担がおおいかぶさることになります。「社会保障財源を口実に、大企業の負担だけを減らしての増税は納得できない」と、各団体から怒りの声があがっています。
熊谷金道議長の話 今年こそは希望の光を見いだしたいと心から願って新年を迎えた労働者・国民にたいし、財界による新年早々からの消費税大増税の大合唱、絶対に許すことはできません。
賃下げ攻撃に加えてリストラで雇用不安と将来不安をいっそう深刻化させ、雇用保険や社会保障の財源を突き崩しておきながら、その社会的責任を棚上げし、自らの負担軽減のために労働者・国民に大増税を押し付けようとする財界の主張は、まさに身勝手としか言いようがありません。
また、消費不況に追い打ちをかける消費税増税論は、肺炎寸前の重病患者に寒風を吹きかけるようなものであり、デフレの加速どころか日本経済を破たんの道へ導きかねない暴論といわなければなりません。
早坂義郎事務局長の話 消費税を毎年1%引き上げ最終的には16%とする日本経団連のビジョン発表に加えて、財界三団体が「消費税の引き上げ必要」と発表するなど、政官財あげて消費税増税の大合唱をしています。大企業には減税し、国民には大増税を押し付けるなど逆立ち税制は許せるものではなく、各界連は憤りを込めて抗議の意思を表明します。
いま、国民は小泉内閣がつくり出したデフレ不況でかつてない苦境に陥れられています。この脱却のためには消費税減税で景気回復をはかる以外にありません。各界連は消費税増税を断固阻止するとともに、減税・廃止を要求し、草の根から広範な共同を呼びかけ新たなたたかいを発展させる決意です。
杵渕智子事務局長の話 私たちは、「消費税はいやだ」の声を集め、草の根で宣伝・対話運動を続けています。今年も初もうで客でにぎわう神社の門前で宣伝をした会がいくつもありますが、生活者の身近で聞く声は、どれも切実です。
財界は、「少子高齢化社会に備えた社会保障の改革」と、いかにも福祉を考えているようなことをいいますが、日本経団連の奥田会長が「消費税増税に賛成する政治家に献金を増やす」などと、とんでもない発言もしています。
もっとたくさんの人々に訴えて、消費税を減税して景気回復を、増税なんてとんでもない、の声を広げていきたいと思います。今年は選挙の年であり、「消費税ノー」の議会にすることをめざしてがんばろうと思います。
市川喜一会長の話 財界三団体が共同で「消費税の引き上げ必要」との記者会見をしたことに「一体、何を考えているんだ」と驚きと怒りでいっぱいです。
いま、全国の中小業者は一九九七年の5%への消費税増税から始まった消費不況・デフレ不況の直撃を受けひん死の状態です。多数の中小業者が消費税を完全には転嫁できずに身銭を切って消費税を負担させられています。
中小業者の最も強い国への要望は「消費税の減税・廃止」です。
こうしたなかで財界だけが法人税や社会保障負担を減らす一方、中小業者・国民には消費税の増税を押し付けようという提言ほど身勝手なものはありません。民商・全商連は、消費税の大増税を阻止するために総力をあげてたたかいます。
相野谷安孝事務局次長の話 医療や年金の財源を口実に消費税の引き上げをすすめようというのが許せません。
そもそも、消費税は高齢化社会にそなえるためとの口実で導入されました。しかし、昨年十月からの高齢者医療費の窓口負担増のように、この十数年間、実施されたのは高齢者、低所得者いじめの施策ばかりです。しかも、財界が税率アップをいう背景には、自らの社会保障負担の削減があります。国民は二度も三度もだまされません。引き上げを許さぬ運動を、社会保障分野からも強めたいと思います。
◆福田康夫官房長官
「消費税の議論を妨げるものではない」(1月7日、記者会見)
◆竹中平蔵金融経済財政担当相
税率引き上げについて「幅広く、選択肢を限らず議論することが必要」(1月7日、記者会見)
◆塩川正十郎財務相
「間接税でもう少し負担してもらわざるを得ない」(1月7日、記者会見)
◆平沼赳夫経済産業相
経済界の増税論に「示唆に富んだ提案だ」(1月7日、記者会見)
◆財界3団体
日本経団連の奥田碩会長、経済同友会の小林陽太郎代表幹事、日本商工会議所の山口信夫会頭がそろって記者会見し、社会保障「改革」の財源として消費税の引き上げが必要、と強調。日商の山口会頭は「情勢をみながら(税率を)上げる時期は早晩くる」(1月6日)
◆日本経団連
16%への引き上げを提案。社会保障制度を「改革」する柱として、消費税率引き上げによる財源確保の必要性を主張。04年度から14年度まで毎年税率を1%ずつ段階的に引き上げることを提示(1月1日)
◆経済同友会
年金の財源として14%への引き上げを提案(2002年12月5日)
◆小泉首相
「消費税議論を封殺しない」「消費税議論を大いに検討してもらいたい」(同12月25日、朝日新聞などとのインタビューで)
「消費税が反対なら、年金の議論はできない」(同12月5日、経済財政諮問会議での発言)
◆坂口力厚生労働相(公明党)
年金の財源について「消費税の引き上げでお願いする案を示し、国民に議論してもらう時期にきていると思う」(同10月1日、時事通信のインタビューで)
◆政府税制調査会・石弘光会長(一橋大学長)
「所得税と消費税を基幹税化すべきだというのが大きな目標」(同10月11日、記者会見)
「将来的に2ケタになると思う。(その時期は)10年後までだろう」(同6月1日、民放テレビ番組で)
◆政府税制調査会答申
「今後、税率を引き上げ、消費税の役割を高めていく必要がある」(同6月14日、「あるべき税制の構築に向けた基本方針」)