2003年1月10日(金)「しんぶん赤旗」
二〇一四年に消費税はなんと16%! こんなことをいうと「悪い冗談はやめろ」と、しかられそうですが、新年早々、消費税率引き上げの大合唱です。財界三団体首脳が音頭をとると、自民党、公明党もこれ幸いと「議論が必要」と便乗です。この不景気に大増税をいい出すそのねらいはどこに――。(石井光次郎記者)
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「二〇〇四年度から毎年1%ずつ税率を引き上げた場合、二〇一四年度から先は、消費税率を16%で据え置く」
日本の財界の総本山、日本経済団体連合会(奥田碩会長)が元日に発表した政策文書「活力と魅力溢れる日本をめざして」の一節です。これら財界の考えに共鳴する政治家には、企業献金をおこなうとして、“カネで政治家を動かす”露骨な姿勢まで表明しています。
「痛みを乗り越えた先に新しい日本がある」といいますが、「痛み」は小泉流だけでもうたくさん。今年から来年にかけ、医療や年金など社会保障改悪で二兆円以上、所得税や発泡酒増税などでも一兆円超。両方合わせて四兆円を超す大負担増です。
消費税率を上げれば未来がひらけるなんてとんでもありません。当時の橋本龍太郎首相が一九九七年、消費税率を5%に引き上げ、社会保障の改悪などと合わせて九兆円の負担増の愚策で、景気回復の芽を摘み、不況を悪化させたことをもう忘れたのでしょうか。
当時と今を比べれば、失業率、倒産件数、雇用所得どれをとっても悪化しています。小泉流の大負担増に加え、1ポイント上げるだけで約二兆五千億円の増税を、十年も毎年続ければ、「新しい日本」がくる前に、日本経済も国民生活も泥沼の不況に沈んでしまいます。
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税金は基本的には、所得などに直接課税すべきものです(直接税中心)。個人でも企業でも、給与や利益など各種の所得を合計したうえで、負担能力に応じて負担する(総合・累進課税)ことが大切です。
ところが自民党政治は、消費税導入で、間接税の比率を上げ、所得税の最高税率と法人税率を引き下げて大企業や大金持ち優遇の税制改悪を進めてきました。
小泉首相は税収「空洞化」などといいますが、その原因は不況と大企業・金持ち減税です。それを棚に上げて、財政が大変だから消費税を上げるしかないというのは、ゆがんだ税制をますますゆがめる無責任な議論です。税制「改正」をいうなら、直接税中心、総合・累進、生計費非課税という民主的原則にたって、抜本的に改革すべきです。
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経団連がこんな乱暴な消費税率アップをぶち上げる口実は、高齢化が進むこの先二十年に備え、社会保障制度などを「改革」しなければならないということです。
小泉流では生ぬるいというだけあって、「改革」の内容は「抑制」一色。「現行制度は…本来の目的を逸脱した水準にまで給付が拡大している」とし、二〇二五年までに、大幅な給付の削減を打ち出しています。
社会保障のサービスは抑制し、財源は消費税率アップでというのでは、庶民にとってダブルパンチです。もともと消費税を導入するときに使われたのが高齢化社会や福祉の充実のためということでした。導入後の経過をみれば、社会保障の充実どころか改悪の連続でした。経団連のシミュレーション自体、消費税率アップと社会保障制度の改悪が抱き合わせです。
消費税は所得が低い人ほど負担が重くなるため、“福祉破壊税”ともよばれるように、いちばん不公平な税制です。その税収をあてにして社会保障を充実するということほど筋違いな議論はありません。
経団連の本当のねらいは、社会保障制度の「改革」ではありません。それは「企業の従業員についても、自営業者と同様、保険料を全額本人が負担する方法に改める」ことなのです。
身勝手な工場閉鎖やリストラで、地域経済や雇用を破壊するだけでは足りずに、社会保障制度への責任まで放棄し、企業負担をひたすら軽くしたいというのです。地域や雇用にたいする企業の社会的責任を重視する世界の流れなど、どこ吹く風です。
経団連にいわれるまでもなく、日本の財政危機は深刻です。財政再建のためには、危機を生み出した無駄な公共事業や軍事費にメスを入れる必要があります。“公共事業に偏重し社会保障を軽視する”という逆立ちした財政をただすことです。
家計消費を温めて景気回復をはかりながら、改革を進めるべきです。
その場合も、自民党や経団連のように、国民に負担増を迫るのでなく、大企業と高額所得者に応分の負担をもとめる『応能負担』(負担能力におうじた負担)の原則を守って改革に取り組むことが基本です。