2003年1月12日(日)「しんぶん赤旗」
小泉内閣と自民、公明など与党三党は、継続審議となっている武力攻撃事態法案など有事法制関連法案について「いかなる事態になっても通常国会で通す」(自民党・山崎拓幹事長、十日)とし、二十日に開会する通常国会での成立に異常な執念をみせています。
国民の反対世論と運動、野党の追及によって有事法案の継続審議に追い込まれてきた政府・与党は、昨年末の臨時国会閉会後、機会あるたびに次期通常国会での成立を確認。七日の与党三党幹事長・国対委員長会談でも「会期内成立を必ず期す」ことが改めて強調されました。
成立に向けた執念は、山崎幹事長が「もし成立しなければ会期を延長することになる」(五日)と、まだ召集もされていない通常国会の延長に言及したり、解散・総選挙は「有事関連法案の成立までありえない」(十日)と語るほどです。
政府・与党はすでに、成立に向けた具体的なシナリオづくりにも乗り出しています。
昨年末の臨時国会閉会直前に、「修正」案の提出と趣旨説明を強行。二十日からの通常国会でも「与党の修正案が再び提出される」(石破茂防衛庁長官、七日)ことになっており、「野党が審議に応じなければ、与党だけでもやる」(山崎幹事長、十日)と、与党単独の強行採決も辞さない構えです。
一方、小泉純一郎首相は昨年末、自民党の山崎幹事長と中川秀直国対委員長に、民主党に協力を呼びかけることを指示。民主党が通常国会で有事法案の対案を示すとしていることについて「(与党の修正案に)こだわってもいない。民主党が乗ってくるのだったら別に修正案を出してもいい」(自民党関係者)とし、「修正」協議への取り込みも探っています。
同関係者は「民主党が(修正協議に)乗ってくれば、(成立に向けた)動きは早くなる。世論の反発も少なくなり、委員会での本格審議は(四月末の)いっせい地方選前にもできる。これまで衆院では審議をしてきているのだから、(衆院では)すぐに通せる」と、狙いを隠しません。
同時に、政府・与党は、民主党などが求めていた「国民保護法制」の具体化作業も着々と進めています。
与党は昨年末、政府に、次期通常国会での審議が始まる前に、「国民保護法制」の法案要綱にあたる「骨子」を作成するよう要請。これを受け、すでに政府は「提示に向けた作業に入っている」(内閣官房)としています。
内閣官房は、同作業の一環として、「有事」の際の動員対象となる自治体や民間業者に対し、昨年十一月に示した「国民保護法制」の「輪郭」についての説明・意見聴取も開始する予定です。
二十日には各都道府県の代表者を集めて説明会を開催。続いて二十九日に全国市長会、三十日には全国町村会に同様の説明を行います。
二月以降には、放送・輸送・電気・ガス事業者や日赤など民間団体に対しても、個別に説明を行う予定です。
一方、有事法案の廃案を求める運動は、昨年後半も、日本弁護士連合会によるパレード(十月二十三日)や、陸・海・空・港湾労組二十団体と宗教者による二万五千人の集会(十二月一日)など、立場を超えての共同が大きく広がりました。
有事法案を廃案に追い込むたたかいは今年が正念場だとして、年明けも、十七日にイラク攻撃と有事法制に反対する集会が東京・日比谷野外音楽堂で開かれ、国会開会日の二十日には国会議員要請や学習決起集会など多彩な取り組みが計画されています。