2007年1月19日(金)「しんぶん赤旗」

オール電化は環境にいい?

CO2 4割増も

CASA提言中間報告


 「電気温水器を導入してオール電化にすると、光熱費は四割程度減るが、CO2排出量が逆に三割以上増加する」。こんな結果が、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)がまとめた「環境面からみたオール電化問題に関する提言」(中間報告)でわかりました。この中間報告は、二十日、大阪市の大阪産業創造館内・地域コミュニティプラザで開かれる「オール電化を考える」研究会で紹介されます。(平井真帆)


 「環境にやさしく、しかも電気代がお得」。こんなうたい文句で建設が急増しているオール電化住宅。給湯や調理などガスがよく使われる場面で、ガスを使わずに電気でまかなう仕組みが「オール電化」です。夜間の電気料金が昼間の三分の一程度に設定されているので、オール電化にすると光熱費が安くなる場合があります。電力会社などは「オール電化は環境にいい」といった宣伝をさかんに行っています。そのため消費者が「光熱費が安いことを、環境にあたえる負担が小さいことと誤解している」と中間報告は指摘しています。

 しかし、家庭において同じだけエネルギーを使った場合、電気が環境に及ぼす負担は、ガスの二―三倍以上になるといいます。電気は発電や送電の過程で60%以上が失われ、企業や家庭に送られるのは40%にすぎません。中間報告は、火力発電所からの汚染物質排出の問題もあげ、無条件に「電気は空気を汚さないから環境にいい」といったイメージに疑問を投げかけています。

◆実例

 中間報告では、二〇〇四年三月に電気温水器を導入してオール電化となった大阪のある家庭を例に取って、導入前後の電気・ガス消費量を比較しています。この家庭では光熱費は平均して四割減になりました(図1)。ところが、CO2排出量に換算して比較してみると、導入前に比べて平均三―四割増加することがわかりました(図2)。

 また、二〇〇五年夏にオール電化となった別の家庭の場合、光熱費の総額に大きな変化はありませんでしたが、CO2排出量は、ほぼすべての月で増加していました。この家庭は電気・ガスの消費量は少なめ。オール電化契約では、夜間の電気代は安くなりますが、基本料金がかかるため、もともと光熱費の少ない家庭では効果が出ないことが推測される、と中間報告は分析しています。

◆逆行

 オール電化は電気代は安くなりますが、使用量が減るわけではなく、むしろ電気温水器の使用などで大量に電気を消費することになり、環境にあたえる負担を増やす場合もあるといいます。中間報告は、オール電化は地球温暖化防止に逆行し、原発や火力発電の増設を促す側面もあると指摘しています。

 電力会社などによる「オール電化は環境にいい」といった宣伝は、誤解を招かないよう配慮する必要がある、とCASAは注意を呼びかけています。

グラフ

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