2007年1月20日(土)「しんぶん赤旗」
世界の食糧需給・見通しと危機対策は?
〈問い〉 世界的な食糧需要の増大、異常気象の増大による不作などで、食糧危機が発生するのではないかと心配です。日本はあまりに食料自給率が低すぎます。ただちに対策を打たなければと思うのですが、現状はどうなっているのですか。危機対策はあるのですか、貴党の考えをお聞かせください。(宮城・一読者)
〈答え〉 ご指摘の懸念は国連機関などでも早くから指摘されてきました。実際、ここ数年の世界の穀物需給は消費量が生産量を上回り、アメリカ政府の予想でも今年度末の穀物在庫率は戦後最低レベルの15・6%に低下する見込みです。これは世界的な食料危機といわれた1970年代前半の水準であり、FAO(国連食糧農業機関)が示す穀物の安全在庫水準の17%〜18%をも下回ります。
最近のひっ迫の原因には、世界の穀倉地帯での干ばつなどとともに、人口増や経済発展にともなう中国などでの食用・飼料用の需要増、原油価格高騰による代替エネルギー需要の増大があげられます。この傾向は一時的ではなく今後も続くと多くの関係者が指摘しています。
このもとで、わが国の食料自給率40%、国民食糧の6割をも外国に頼っているのでは、明らかに国民の生存基盤が脅かされるといっていい事態です。最近の政府の世論調査でも、わが国の将来の食料供給について77%の国民が「不安がある」と答えており、ただちに実効ある手を打つべき、というご意見は当然のことだと思います。
ところが、自民党政府がやっているのは逆です。農産物の輸入をさらに増やし、大多数の農家を切り捨てる「改革」を進めています。これでは農業と農村は維持できず、自給率がさらに低下するのは必至でしょう。
その一方で政府は、「不測時の食料安全保障マニュアル」と称して、食料輸入がストップした場合、農地を最大限に耕し、イモ類など熱量効率の高い作物への転換を促し、国内生産だけで一人1日2020キロカロリーを供給する「危機管理策」なるものを示しています。これは、「米飯は朝夕茶わん一杯、三度の食事の主役はイモ、おかずは夕食の焼き魚一切れ程度」で昭和20年代の水準だといいます。
しかし、農家を大幅に減らし、農地をどんどんつぶして、いざという時にはイモをつくれ、増産しろといっても、いったい誰がつくるのでしょう。生産技術や担い手が失われたなかではまったくの絵に描いたもちです。
“有事”の食料安全を保障するのは“平時”からの備え=農業を基幹的な生産部門に位置づけ、生産の多面的な発展に力を入れ、食料自給率を向上させることが不可欠なのです。(橋)
〔2007・1・20(土)〕