2007年1月25日(木)「しんぶん赤旗」

米大統領 一般教書

イラク撤退いつ? 財政赤字どう解消?

国民不信に釈明


 【ワシントン=山崎伸治】二十三日のブッシュ大統領による一般教書演説は、これまでとは違う状況で行われました。各種世論調査で同氏の支持率は最低を記録しています。昨年十一月の中間選挙の結果、同政権下で初めて、上下両院で野党・民主党が多数派となっています。今回の演説は、ブッシュ氏への不信をますます募らせる米国民と議会を意識して、あれこれ釈明するものとなりました。


対外問題

 イラク問題は、世論調査でも米国民にとって「最重要課題」となっています。事前には演説で大きく取り上げられないとの観測もありましたが、実際には対テロ戦争には一定の時間を割きました。

 しかしその論法は、“イラクで勝利しなければ、中東がテロの温床となり、米国が危険になる”と国民を脅すものでした。

 議会では民主党だけでなく、与党・共和党の有力議員も加わり、イラク増派に反対の決議案が提出されています。ブッシュ氏はそのことも踏まえ、「米国はイラクで新しい戦略を追求している。それを実行させてほしい」と議会に協力を呼びかけました。

 しかし、イラク増派で問題が解決するのか、いつになれば米軍のイラク撤退が実現するのか、演説はまったく答えていません。

 イランについては、テロリストを支援していると繰り返す一方、当局は核問題の外交的解決を進めていると指摘。北朝鮮の核問題についても「中国と日本、ロシア、韓国と協力して、外交に力を入れている」と述べました。

国内問題

 「希望と好機のある未来」―ブッシュ氏は内政部分で繰り返しました。世論調査で国民の七割が先行きに不安を感じていることを意識した発言です。

 財政赤字の解消を議会に呼びかけ、「イヤマーク」(目印)と呼ばれる利益誘導型の支出削減と社会保障給付の見直しを求めました。しかし赤字拡大の最大要因である軍事費増大には触れずじまいでした。それどころか一方で九万二千人の陸軍・海兵隊の増員の必要性を改めて強調しました。

 「すべての国民が購入可能で、利用可能な医療を受けられる」ことが重要だとしながら、それにこたえるのは「民間の医療保険」だとして、政府の責任は初めから放棄しています。医療保険加入者に税控除を認めるなどの措置は提案したものの、保険を売る企業側の問題には触れていません。

 エネルギー問題については、今後十年でガソリンの消費を20%削減することを提案。新エネルギー源の開発促進を掲げました。それによって「地球的規模の気候変動という深刻な問題に対処できる」と一般的に述べたものの、ブッシュ政権が離脱した地球温暖化防止京都議定書には触れず、具体的な達成目標を示しませんでした。


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