2007年1月26日(金)「しんぶん赤旗」
原子力空母配備 しゅんせつ工事事前説明
施設局 強引に要求
横須賀市「住民投票」理由に拒否
米原子力空母配備にともなう神奈川県横須賀港のしゅんせつ工事をめぐって、横浜防衛施設局が横須賀市に「事前説明」を申し入れていたことが二十五日、本紙の取材で明らかになりました。
横浜防衛施設局が申し入れたのは今月十五日。応対した横須賀市港湾部は「(原子力空母配備の是非を問う)住民投票条例問題の結果が出るまでは受けられない」と書類などの受け取りを拒否したといいます。
市港湾部によれば、横浜防衛施設局側は「しゅんせつ工事のための深浅測量図、しゅんせつ範囲も決まったので概略を説明したい」と事前説明の開始を表明。このなかでしゅんせつ工法や土砂の処分先などについては「検討中」として明らかにしなかったとしています。
しゅんせつ工事は、米軍の原子力空母の母港化に必要な水深を確保するためで、日米両政府が合意している配備期日の〇八年夏までに完了をめざしています。数十億円とされるしゅんせつ工事費は日本の「思いやり予算」で負担。
港湾管理者である横須賀市への事前説明を経て、港湾法による協議がはじまります。
横須賀基地への米原子力空母配備の是非を問う住民投票条例の制定を求める直接請求署名は署名総数四万一千五百九十一筆のうち三万七千八百五十八筆が有効署名と市選管が確定、二月五日にも臨時議会が招集され、審議されます。
米軍のためなりふり構わず
解説
通常、行政同士の説明や協議は事前に双方が日程や認識を一致させた上で席につきます。しかし今回の事前説明は横浜防衛施設局が「行きたい」として一方的に“押しかけた”格好でした。
横須賀市は蒲谷亮一市長が米原子力空母の配備を容認しています。しかし、有権者の五十分の一をはるかに超える四万筆もの住民投票条例制定を求める直接請求署名が提出され、来月上旬にも招集予定の臨時市議会で審議されます。昨年末に横浜防衛施設局がしゅんせつ工事の事前調査結果を報告してきた際に、横須賀市側は同条例案問題にもふれ、慎重な対応が迫られていることを伝えています。
にもかかわらず横浜防衛施設局があえて、横須賀市に「事前説明」を求めた背景に、事前調査での予想外の結果があります。「海底の硬い岩盤問題」です。
原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会共同代表の呉東正彦弁護士はこう指摘します。「(硬い岩盤の出現で)しゅんせつ工事の長期化が避けられなくなった防衛施設局が、配備期日までになんとしても完了させるため住民投票問題を承知しながら、アメリカのためになりふりかまわず乱暴な対応に出てきたのではないか」(山本眞直)