2007年1月26日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党国会議員団総会
志位委員長のあいさつ(大要)
二十五日の第百六十六国会開会にあたって開かれた日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつ(大要)は次のとおりです。
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この国会は、国民の暮らしと平和にとっても、直面するいっせい地方選挙と参議院選挙という二つの全国選挙での勝利にとっても、たいへん重要な国会となります。
わが党は、この国会で、つぎの三つの大問題で、わが党ならではの論戦をおおいに展開したいと思います。第一は、貧困と格差を打開し、国民の暮らしをまもる論戦です。第二は、憲法と平和、民主主義をまもりぬく論戦です。第三は、「政治とカネ」をめぐる腐敗根絶のための論戦です。
貧困と格差を打開し、国民の暮らしをまもる論戦を
第一に、貧困と格差を打開し、国民の暮らしをまもる論戦についてです。この問題では、いくつか重要な角度があります。
「貧困・格差拡大の三悪予算」――国民の立場での抜本的組み替えを
まず、来年度政府予算案の問題点の徹底究明です。これだけ国民のなかで貧困と格差の新たな広がりが深刻な大問題になっているのに、政府予算案は、それに冷酷な追い打ちをかける内容となっています。三つの大問題があります。
一つは、庶民への負担増と社会保障切り捨てです。定率減税の廃止による大増税、連動しての社会保険料の負担増が、また大きな波になって国民の暮らしにかぶさってこようとしています。「ワーキングプア」が大問題になっているときに、雇用保険など雇用対策費を半分にしようとしています。生活保護の母子加算の廃止も重大であります。
二つ目に、空前の大もうけをしている財界にたいしては、減価償却制度の拡充などのいっそうの大減税のうえ、法人税率の引き下げを検討する。大資産家への証券優遇減税は、本来は期限が切れるのに継続するということが盛り込まれています。
三つ目に、税金の新たな無駄づかいの拡大です。道路特定財源の温存、スーパー中枢港湾や三大都市圏環状道路などへの大幅予算増。さらに米軍への「思いやり予算」と基地強化予算は、あわせて二千八百六十二億円にもなります。
いわば「格差・貧困拡大の三悪予算」というべき中身となっています。わが党は予算案のこうした問題点を徹底究明し、国民の立場での抜本的組み替えを正面から提起してたたかいぬくものです。(拍手)
「残業代ゼロ法案」――断念させるまで論戦と国民的運動を
労働法制の大改悪を許さない論戦も重要な課題です。首相は、ホワイトカラー労働者の残業代を取り上げる「ホワイトカラー・エグゼンプション」法案について、通常国会での見送りを表明しました。しかし厚生労働省、財界の側から、激しい巻き返しが起こっています。彼らは、「『残業代ゼロ法案』と名前をつけられたのがまずかった」(笑い)といい、この法案の本質をごまかして強行することをあきらめていません。
この悪法は、残業代とりあげによる労働者の直接の生活苦とともに、労働者をはてしない長時間労働に追い込み、過労死など労働者の健康と命を破壊する希代の悪法です。労働政策審議会のある使用者側委員は「過労死は自己管理の問題」といいはなちました。まさに「過労死促進法」であり、このくわだてを断念させるまで論戦と国民的運動をおおいに広げようではありませんか。(拍手)
さらに労働法制をめぐって財界は、わが党が「偽装請負」を追及しますと、派遣労働を永久化する法改悪をもとめてきています。現行法では、派遣労働は、一定期間たつと受け入れ企業が直接雇用する義務が出てきます。この義務をなくして、派遣労働という使い捨て労働を永久化する――この財界の厚顔無恥な野望にもストップをかける論戦が必要であります。
切実な実態から出発して、根源をつく論戦を
わが党は、三中総決定で、「貧困打開と生活防衛の国民的大運動」をよびかけました。いま深刻な貧困が、国民のあらゆる層をとらえて広がっていますが、そのあらわれ方は、多面的であり、また多様です。そういうなかで、どうやって私たちがこの問題にとりくんでいくか。私は、国民の暮らしの現場の生きた実態の告発から出発して、その根源をつく論戦――これが大事だと思います。
たとえば、いま母子家庭など一人親家庭は、全国で百四十万世帯をこえて広がっています。そこに児童扶養手当の削減、生活保護の母子家庭加算の廃止など、むごい仕打ちが襲おうとしています。その実態をつたえたNHKの「ワーキングプア」の特集は、大きな反響をよびました。また、国保料が高すぎて払えず、保険証をとりあげられた世帯は、全国で三十二万世帯をこえて広がっています。受診抑制の末に病状が悪化して亡くなる悲劇があとをたちません。そこにさらに国保料の値上げが襲いかかろうとしています。わが党は、民主団体と協力して、草の根で国民の命綱としての役割を、全国どこでも果たしている党です。そういう党として、貧困の実態を、暮らしの現場から生きた形で告発する。これが論戦をすすめるうえで大切であります。
同時に、問題の根源をつくことが必要です。OECD(経済協力開発機構)が、昨年七月、日本の経済政策にたいする提言をまとめた対日経済審査報告書を発表しました。OECD加盟国のうち調査した十七カ国の比較で、日本の貧困率はアメリカについで二位となっています。そして、この提言を見ますと、深刻な二つの特徴が読み取れます。
第一は、日本の税と社会保障による貧困の削減率は、十七カ国中最下位だということです。つまり、税や社会保障の所得再分配機能がまともに働いていない。とくに私が驚いたのは、子どものいる世帯では、税と社会保障によって、逆に貧困率が拡大していることです。こんな国は日本だけです。
第二は、異常に低い最低賃金の問題です。所得の中位値との比較で、他の国の最低賃金は、四割台から五割台です。ところが日本は32%で最も低い。日本は最低賃金の水準が、OECD諸国でも、最低の国となっているのです。
OECD報告は、いま日本で広がっている貧困の根源に、人間らしい労働のルールがないこと、「逆立ち」した税財政という二つの大問題があることをしめしています。
切実な実態から出発しながら、この二つの根源をつき、そして同時に、最低賃金の抜本的引き上げをはじめ、貧困打開と生活防衛の緊急の要求を明確にして、おおいに論戦と運動にとりくみたいと思います。(拍手)
憲法と平和、民主主義をまもりぬく論戦を
第二に、憲法と平和、民主主義をまもりぬく論戦についてです。
安倍首相は、この国会で改憲手続き法を成立させ、参院選で改憲を争点にすえると宣言しました。こんなことは、世論調査をみても、国民の誰ものぞんでいないことです。しかし相手が、正面からこの問題を提起してきた以上、正面から改憲ストップの論戦を私たちは展開します。
異常なアメリカいいなりの国が、「海外で戦争をする国」になる危険
改憲の狙いは、もはや明らかです。安倍首相は、NATO(北大西洋条約機構)の理事会の演説で、「自衛隊が海外での活動をおこなうことをためらいません」とのべました。どこへでも自衛隊を出す、ネパールにも出す、アフガニスタンにも出す、歯止めない海外派兵の拡大をすすめようとしています。日米同盟を「血の同盟」にし、「米国とともに海外で戦争をする国」をつくる。ここに改憲の狙いがあるということは、首相の一連の言動からも、もはや隠しようもなくなりました。
私が、とりわけ強調したいのは、異常なアメリカいいなりの国が「海外で戦争をする国」になることの危険であります。
いまイラクでは、無法な侵略と占領支配で「内戦状態」といわれる事態におちいっています。にもかかわらず、ブッシュ大統領はイラクへの二万人増派をきめるという、愚かな選択に踏み切りました。これにたいして、米国国内でも、民主党だけでなく、共和党の有力議員をふくめて超党派で反対の声が広がっています。にもかかわらず安倍首相は、いまだにイラク戦争を支持したことを「正しかった」とし、ブッシュ大統領の米軍増派にたいしても「強く期待する」と全面支持を表明しました。国際的にみても異常というほかない対応です。米コロンビア大学のジェラルド・カーチス教授は、「日本政府は、ブッシュ大統領のイラク政策をほぼ無条件に支持しているが、それは今や米国の共和党にさえ奇異に映る」とまでのべました。こういう国が、憲法をかえて「海外で戦争をする国」になることが、どんなに危ういかは明らかです。憲法改悪反対の国民的多数派をつくることに貢献する論戦に、おおいにとりくもうではありませんか。
イラク特措法の延長問題が、この国会では問われてきます。七月の末で(特措法の期限が)切れます。今国会で延長問題が出てきます。これを許さず、自衛隊のすみやかな撤退をもとめる論戦もきわめて重要であります。
改憲手続き法案――狙いを明らかにするとともに、不公正なしくみを告発する
憲法問題では、改憲手続き法案が、重大な争点となります。これまで、自公両党と民主党は、この法案について、「憲法改定とは別の中立的な法律」だとの弁明を繰り返してきました。しかし、安倍首相が自分の任期中の改憲と一体に、改憲手続き法の早期成立を提起するなかで、この弁明は一気に崩れました。その目的が、九条改憲にあることはもはや誰の目にも明らかになりつつあります。「改憲手続き法は九条改定と地つづきの悪法」――この本質を徹底的に明らかにすることが、まず基本であります。
同時に、この法案が、改憲案を通しやすくする不公正・非民主的なしくみとなっていることを告発することが重要です。第一に、最低投票率の規定がなく、国民の二割台という少数の賛成でも、憲法改定ができること。第二に、すべての国民に自由な運動が保障されるべきなのに、公務員・教育者への規制をもうけていること。第三に、有料のテレビ、ラジオ、新聞などの広告が、資金力のある財界や改憲推進勢力に独占される危険があること。第四に、改憲案の国民への周知、広報を、改憲推進政党主導でおこなうしくみが盛り込まれていることなどであります。
改憲手続き法案を、自公と民主の合作で強行させないための論戦とたたかいは、今国会の重要な課題です。これを廃案に追いこむための論戦とたたかいに、おおいに力をそそごうではありませんか。(拍手)
改悪教育基本法の具体化に反対し、教育の矛盾を前むきに打開する
この国会は、改悪教育基本法の具体化とたたかう最初の国会となります。密室の「教育再生会議」での答申を受けて、政府は、三つの法案を今国会に提出する方針を決めました。その方向は、全国一斉学力テスト、習熟度別指導、学校選択制の拡大など、競争とふるいわけの教育をいっそう激化させ、教育現場の矛盾と混乱をひどくすること。いじめ問題でも、教員への「評価」と「免許更新」の問題でも、上から子どもと教師を押さえつける権力的統制を強化すること。これらがその方向であります。
教育基本法改悪反対のたたかいでは、日本列島をゆるがすエネルギーが発揮されました。それをさらに発展させ、日本国憲法に立脚し、教育の条理にそくして、改悪基本法の具体化に反対し、子どもたちの未来をまもるとりくみに力をつくしたい。政府は、「教育国会」といっていますが、まさに「教育破壊国会」にしようとしているわけで、このくわだてから子どもたちをまもり、子どもたちにとってより良い教育とは何かを、おおいに国民の間で語り合いながら、教育の矛盾を前向きに解決するために力をつくしたいと思います。
「政治とカネ」の腐敗根絶のための論戦を
第三は、「政治とカネ」の腐敗根絶のための論戦についてです。
「事務所費」問題のどこが問題か
わが党の追及と「しんぶん赤旗」報道をきっかけに、「事務所費」問題が大問題になっています。伊吹文部科学大臣、松岡農林水産大臣など閣僚や、自民党、民主党の政治家が、家賃のいらない衆参の議員会館を「主たる事務所」としながら、巨額の「事務所費」を政治資金収支報告書に計上していた問題であります。
どこが問題か。一言でいえば、現行の政治資金規正法にも反する虚偽報告の疑惑であるということです。現行規正法の支出の項目は、「政治活動費」と「経常経費」とに分けられており、「政治活動費」は透明性が必要だとして、五万円以上の支出は領収書の添付が義務づけられています。「経常経費」は領収書は不要で、何に使われたかの報告はいりません。「事務所費」は「経常経費」の一部とされ、何に使われたかの報告はいらない。こういうしくみになっています。この仕分け自体が、不透明な問題点を抱えており、法改正は当然必要です。同時に問題は、この現行規正法にてらしても、「事務所費」の名目で一千万円を超えるお金が計上されることは虚偽報告の疑惑が出てくる――ここにあります。「制度のせい」という逃げを許さないことが重要です。
二つの要求――実態を明らかにせよ、政府と政党としての責任を果たせ
わが党は、つぎの二つの点をきびしく要求し、論戦を展開するものです。
第一は、疑惑がかけられた政治家は、国民の前に「事務所費」の実態を明らかにすべきだということです。領収書や帳簿の保存は義務づけられているわけですから、その気になればすぐに公開できるはずです。問題がないというならば、公開せよ――このことを私たちは強くもとめます。佐田前行革大臣は、真実を明らかにしないまま辞めたわけで、証人喚問による糾明が必要です。伊吹大臣、松岡大臣も、実態を明らかにする必要があります。それができなければ大臣の資格なしといわなければなりません。民主党の三役にも疑惑が広がっています。「赤旗」を攻撃するのは筋違いであって、疑惑がないというならば、みずから公開すればすむことではありませんか。誰がみても異常な額の「事務所費」の実態を公開せよ――このことを私たちは強くもとめるものです。(拍手)
第二に、安倍首相は、重大な任命責任をおっており、閣僚の疑惑解明を責任をもっておこなう責務をおっています。首相は、「『法にのっとって適切に処理されている』と報告をうけている」とのべ、問題はないという態度をとっています。こんな無責任な態度が許されるものではないことは明りょうです。また、党首脳部に疑惑がかけられている自民、民主両党は、党として自浄作用を発揮すべきであります。
企業・団体献金、政党助成金頼み――ここにモラル喪失の根源がある
「政治とカネ」の問題は、これにとどまるものではありません。角田参院副議長は、政治資金の「入り」の問題での、ヤミ献金疑惑が大問題になっています。政治資金の「入り」でも「出」でも、「美しい国」どころか、「醜い政治」になっている。それが国民から指弾されていることを、自民党も民主党もきびしく肝に銘ずるべきです。
そして私は、その根底に、企業献金の無制限の拡大、政党助成金頼みがいよいよひどくなるという政治の腐敗と堕落があるということをいわなければなりません。「政治とカネ」に対するモラル喪失をつくっている、一番の根源はここにあります。わけても今度の「事務所費」問題で、国民がなぜ怒っているか。それは、国民の血税である政党助成金をもらいながら、その使途を不明にしている――ここにいちばんの怒りが集中しているということを知るべきであります。
日本共産党は、企業献金も政党助成金もうけとらない政党として、この問題の徹底究明のために全力をあげる、この決意をこの場で申し上げたいと思います。(拍手)
「いまの政治を変えてほしい」――無党派層の思いや気分にこたえた論戦と運動を
いま一方では、安倍内閣の支持率の続落傾向が続いています。他方で、民主党が、いまいった三つの問題のすべてで、まともな「対抗軸」を持たずに迷走しているという姿があります。そのもとで、この間の一連の地方選挙でも、自民にも民主にも、どちらにも期待をたくせないという流れが広がり、無党派層が広がっていることに注目すべきです。この流れは、全体としてみれば、「いまの政治を変えてほしい」という流れであるし、新たな膨大な人々が日本の進路を真剣に模索している。こうした無党派の人々に私たちが視野を広げて働きかけること、こうした人々の思いや気分に応えられるような論戦と運動がたいへん大切になってきていることを強調したいのであります。
まさに日本共産党の出番の情勢です。この国会で、党議員団の真価を思う存分発揮する大奮闘を展開し、国民の利益をまもり、二つの全国選挙での勝利に道を開くために、衆参十八人の国会議員団が力をあわせて、がんばり抜きましょう。(拍手)