2007年1月30日(火)「しんぶん赤旗」
列島総動員さらに具体化
「朝鮮半島有事」想定の日米作戦計画
平和的・外交的解決に逆行
一面所報の、朝鮮半島有事を想定した日米共同作戦計画の改定作業は、「在日米軍再編」の名で進められている日米の軍事一体化が、日本国民の生活を巻き込む危険を持っていることを示しています。同時にそれは、北朝鮮の核問題で国際社会が一致して追求している平和的外交的な解決の方向に真っ向から逆らうものです。(田中一郎)
空港・港湾使用 米が要求
改定作業が進む共同作戦計画は、具体的にどれだけの規模の米軍支援を想定しているのか―。
在日米軍は一九九四年の北朝鮮の「核危機」問題で、同国への軍事作戦を想定し、日本側へ千五十九項目もの支援を要求したことがあります。九九年に日本共産党の志位和夫書記局長(当時)が、自衛隊統合幕僚会議の内部文書を暴露し、明らかになりました。
同文書によれば、日本側は米側の要求に基づき、成田・新千歳・福岡など十一民間空港、名古屋・大阪・福岡など十一民間港湾を米軍に提供することを検討。ほかにも「民間輸送業者の役務調達」「道路の優先使用」「交通規制」も対米支援措置として明記していました。
この米側の要求と日本側の検討内容は、その後の日米軍事協力の指針(ガイドライン、九七年)と周辺事態法(九九年)の基礎となっており、米軍は今も、こうした膨大な支援を求めているとみられます。
実際、今回の共同作戦計画の改定作業にあたって、米側は昨年末、使用したい計三十カ所前後の空港・港湾名を日本側へ伝えてきていると報じられています。
米軍は、周辺事態法と、その後制定された有事法制の発動を先取りする民間空港・港湾の使用も繰り返しています。
有事法制が制定された二〇〇三年以降をみても、米軍が離着陸した民間空港(―〇五年)は三十八。三年間で十回以上離着陸した空港だけでも十四に達しています。寄港した民間港湾は二十二に及んでいます。(地図)
共同作戦計画に「有事法制を反映する」とした在日米軍再編の日米合意(〇五年十月)は同計画の「検討作業を拡大」し、「より具体性を持たせ」ると強調。民間空港・港湾の「詳細な調査」をするとしていますが、すでに米軍によって進められている可能性もあります。
国民生活に深く関係
さらに同合意は、共同作戦計画の検討作業拡大のため、「関連政府機関と緊密に調整」するとしています。「関係省庁局長等会議」の七年ぶりの再開は、この具体化です。
同会議は、内閣官房副長官が議長を務め、内閣官房のほか、外務、防衛、総務、国交、法務、財務、文科、厚労、経産の各省と消防庁などで構成されています。
広範な省庁が参加しているのは、作戦計画に盛り込まれる米軍支援が、施設の提供、輸送、補給、整備、医療、通信など国民生活全般にかかわるからです。有事法制は、こうした米軍支援に強制力を持たせました。
また在日米軍再編の日米合意は、共同作戦計画の検討作業拡大のために、関連政府機関のほか、「地方当局と緊密に調整」することや「二国間演習プログラムを強化する」ことも挙げています。
この日米合意に符合するように、〇六年一―二月に陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本県)で実施された陸自西部方面隊と米陸軍第一軍団などとの共同指揮所演習「ヤマサクラ」には、陸自側の招待で、九州・沖縄各県の担当者が初めて参加しました。米軍支援を、政府機関だけでなく、自治体にも担わせようという狙いがうかがえます。
国際社会の流れは
九四年の北朝鮮「核危機」の際、米国が軍事作戦に踏み切れなかったのは、日本側に対米支援の具体的な計画がなかったことが一因だったと指摘されています。今回の共同作戦計画の改定作業は、危険な軍事対応への踏み込みにつながりかねません。
米国は、朝鮮半島有事を想定した日米共同作戦計画について「政府としての通常の準備の一環」と肯定しつつ、「われわれが望んでいるのは(北朝鮮の核問題をめぐる)六カ国協議の早期再開だ」(スノー大統領報道官、今月五日)と強調しています。国際社会の一致した流れになっている、問題の平和的外交的な解決が求められます。
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