2007年2月4日(日)「しんぶん赤旗」
イラク情勢混迷示す
米国家情報評価
政府は増派正当化
【ワシントン=山崎伸治】米政府は二日、今後一年から一年半のイラク安定化の見通しに関し、米諜報十六機関の見解をまとめた報告書「国家情報評価」(NIE)の非機密部分を公表しました。
報告書は、同期間に「状況を転換する努力がある程度前進を示さなければ、全般的な治安状況は引き続き悪化する」との認識を示し、「連合軍が急いで撤退するならば、宗派間紛争の規模や範囲が大きく拡大することはほぼ確実だ」として、米軍の駐留継続と増派の必要性を説くものとなっています。
今回の公表は、ブッシュ政権が二万一千五百人の米軍増派を提案したものの、米国民の支持は低く、議会でも与党・共和党から反対の声が上がっていることを受けて、イラク情勢の「深刻さ」を訴えたもの。公表されたのは九十ページのうちわずか四ページ弱ですが、公表部分だけでも、イラク情勢の混迷ぶりを示しています。
NIEは「内戦」という言葉について、「イラクにおける紛争の複雑さを適切にとらえたものではない」と指摘。しかし、民族的・宗派的帰属意識の激化など「イラク紛争の重要な要素を正確に表現している」として一面では内戦状態であることを認めています。
イランについては「イラクのシーア派武装勢力に武力支援を行っている」と非難し、シリアも武装勢力がイラクに侵入するのを防いでいないと指摘しています。
公表されたNIEについて、民主党のリード上院院内総務は二日、声明を発表し「この報告には、大統領の新政策が米国の国家的利益を擁護するような勝利をもたらすものであることを示唆する要素は見られない」と指摘しました。