2007年2月9日(金)「しんぶん赤旗」
主張
増派米軍の攻撃
破局に向かって突き進むのか
米政府は、イラクへの二万人以上の増派を加速しながら、首都バグダッドで米軍とイラク政府軍と合同で、占領支配に反対する勢力を一掃する大規模な軍事作戦にふみだそうとしています。米軍・イラク軍あわせて九万人の作戦は過去最大です。
軍事対決を強化することは、混迷の度を深めているイラク情勢をさらに悪化させるものです。国際社会で軍事対決の泥沼化を懸念する声がいよいよ強まっています。
憎しみが増すだけ
イラクには十三万人をこす米軍が駐留し、そのうち二万人あまりがバグダッドとその周辺で軍事活動をしています。米政府は増派部隊二万一千五百人の八割をバグダッドにふりむけ、攻撃を集中し、抵抗勢力を一掃するといっています。
すでにクウェートから空挺(くうてい)旅団が移動し、さらに数カ月をかけて米本国から陸軍四個旅団と海兵隊二個旅団が投入されます。さらに、戦闘部隊の保護にあたる支援部隊も最大二万八千人投入されるという米議会予算局の試算もあります。
イラク戦費も異常にふくれあがっています。社会福祉予算を大幅に削減して、二〇〇七年度補正予算で約一千億ドル(約十一兆円)、〇八年度約千五百億ドル(約十七兆円)を追加投入します。二〇〇一年以来のイラク、アフガニスタンの戦費の累計は七千三百億ドルとなり、ベトナム戦争(一九六四―七三年)の戦費を大幅に上回ることになります。
これだけのぼう大な兵力と予算を投入しても事態を変える見通しなどありません。イラクを管轄する米中央軍司令官に指名されたファロン太平洋軍司令官も「好転させる保証はない」とのべています(一月三十日米上院軍事委員会)。
武力を使えば思い通りになるとみるのがそもそも間違いです。それはイラク戦争でアメリカがいやというほど経験してきたはずです。
イラクの事態が悪化しているのは、ブッシュ政権が大義もなしに一方的に侵略をしたうえ、非人道的な無差別攻撃をくりかえし十万人もの民間人の命を奪ってきた結果です。
先月、米・イラク軍がナジャフでおこなった武力攻撃では女性や子どもなど二千五百人が虐殺されたとの情報もあります。こうした占領米軍の軍事作戦にイラク国民が憎悪を強めているのは当然です。
米軍がイラク人同士をたたかわせながら、武力攻撃を強めれば強めるほど、テロリストに新たな蛮行の口実を与え、宗派間、政治勢力間の対立を激化させることは明白です。
カーター政権時代の大統領補佐官だったブレジンスキー氏は、「植民地時代はもう終わったのに、植民地戦争を続けるのは、自滅の道である」と批判しています。アメリカの横暴を許すわけにはいきません。
撤退要求にこたえよ
米軍撤退を求める声は米国内外で広がっています。米軍駐留に固執するブッシュ大統領の支持率は激減しています。「長くとどまるほど状況は好ましくなる」(ハリルザド駐イラク米国大使)というのは撤退を求める国際世論に背を向けるものです。
イラク派兵国も撤退が相次ぎ、兵力を削減せずに派兵を継続する国は三十八から十七に激減しています。ドストブラジ仏外相は、イラクの事態は「外国軍撤退の展望が定まる場合にのみおさまる」とのべています。
破局化をふせぐためには政治的・外交的解決を強める道しかありません。そのためにもすみやかな米軍撤退が不可欠となっています。