2007年2月10日(土)「しんぶん赤旗」

主張

国連・温暖化報告

経済社会のあり方が問われる


 地球温暖化の観測と予測についての国連の新しい報告書が六年ぶりにまとまりました。世界の科学者たちの知識と見識を集積した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第四次評価報告書第一作業部会の報告書です。

 報告書の特徴は、二十世紀半ば以降の温暖化の原因を「人為起源の温室効果ガスの増加」とほぼ断定したことです。二〇〇一年の第三次評価報告書では、「可能性が高い」としていましたが、今回の第四次評価報告書では、「可能性がかなり高い」と踏み込んだ表現になっています。

鍵を握る人間の活動

 温暖化が「人為起源」、つまり人間の営みによるものだということは、裏返せば、温暖化防止の鍵を握るのは人間の行動です。

 報告書は、大気中の二酸化炭素の量が、工業化以前の約0・0280%から二〇〇五年には0・0379%に増加しているとのべています。大気の構成は、酸素が約五分の一、窒素が約五分の四を占めており、人間が生きていくのにほどよい気候や気温を保障しています。それが、ここ半世紀ほどの人間の経済活動によって、二酸化炭素の増加の方向に大きく変化しつつあり、このまま放置すれば人類と地球の共存を危うくしかねない事態を招いています。

 その点で報告書が、今後の経済活動のあり方によって二十一世紀末の平均上昇気温に違いが出ると予測していることは重要です。

 「環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会においては約一・八度(一・一―二・九度)である」一方、「化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では約四・〇度(二・四―六・四度)」と予測しています。ただ、二〇三〇年までは、経済活動と社会のあり方にかかわらず、十年当たり〇・二度の気温上昇があるとしています。

 第三次評価報告書では、今後の社会のあり方による区別はせずに、二十一世紀末の気温上昇を一・四―五・八度としていました。今回の報告書は、温暖化の加速を明らかにするとともに、温暖化を抑制するために経済と社会のあり方が問われていることを浮き彫りにしています。

 すでに過去百年間に気温が〇・七四度上昇し、集中豪雨、干ばつなどの異常気象や海面上昇を引き起こしています。加速する温暖化の実態を直視し、十八世紀の工業化以降の、経済活動のあり方への警告として、真剣に受け止める必要があります。

 国際社会は温暖化防止の一歩として、工業国に温室効果ガスの削減を義務付けた京都議定書を米国の離脱という困難をのりこえて〇五年二月に発効させ約束を果たすための行動を進めています。日本では京都議定書で決められた削減目標実現のめどがたっていないばかりか、むしろ増加しています。排出量の八割を占める事業所や官庁の責任は重大です。

科学者の国民への訴え

 第四次報告書の公表を受けて、日本の科学者たちが、「気候の安定化に向けて直ちに行動を!」という、国民への緊急メッセージを発表しました。産業界にたいし、「重要な社会的使命」として温室効果ガスの低減とそのための投資を求めています。政府や自治体の積極的な行動を求めるとともに、国民にたいし、産業界や政府を動かし日本を「低炭素社会」に変えていくための行動に立ち上がるよう訴えています。

 今回の報告書を、利潤第一主義の資本主義の社会のあり方を見直す契機としたいものです。


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