2007年2月12日(月)「しんぶん赤旗」
主張
「農政改革」
食料と農業守る運動の発展を
いま農村では、多数の農家を政策の対象から排除する安倍内閣の「農政改革」が動きはじめています。農水省が日本農業に壊滅的な打撃を与えると指摘し、衆参農水委員会や地方議会が反対を決議しているオーストラリアとのFTA(自由貿易協定)交渉も進められようとしています。
農業衰退に拍車かける
内閣府が昨年十二月に発表した調査では、「外国産の方が安い食料は、輸入する方がよい」と考える人は7・8%で、逆に「高くても国内で作る方がよい」という人は86・8%で過去最高でした。
安倍内閣の農政は、国民の食料・農業に対する要求・願いとまったく逆行しており、農家・消費者をはじめ、JA(農協)や自治体関係者、地域住民のなかで大きな問題になっています。
政府の「農政改革」の中心である「品目横断的経営安定対策」は、ごく少数の大規模経営に支援を集中し、それ以外は対象にしないという、これまでの農政のあり方を根底から覆す政策です。それが現実に地域で農業を担っている人、農業を続けたい人たちを排除し、国内農業をいっそう衰退させることは明らかです。
日本農業新聞東北支所が行ったJA組合長へのアンケートでは、おおいに評価するはゼロ、半数が疑問や抵抗感をもっています。「みんなが担う農村の現場を知らないもののやること」(農民運動全国連合会=農民連=定期大会で、佐々木健三会長=当時)との批判は当然です。
政府は松岡農水相を先頭に、集落営農でやれるから小農切り捨てではないなどと現場の不安や怒りをそらしています。しかし現実は「リーダーや世話役がいない」「相当の時間や情報が必要」(同アンケート)というのが実態であり、政府の一方的な基準の押しつけでは、多くの集落が対応できません。
米価など農産物の価格の暴落や農産物の輸入拡大が野放しであるため、農業が続けられずに離農、耕作放棄が増え農村が荒廃して地域経済も深刻な打撃を受けています。オーストラリアとのFTAは、それをいっそうひどくする恐れがあります。同国は農産物の大輸出国ですが、昨年大干ばつが起きたように、生産、輸出はきわめて不安定です。
国民の食料確保は各国の大事な権利という食料主権の立場にたち、政府による適切な国境措置と米価の下支え、自治体による地域特産物の価格保障や販路の確保、小規模土地改良など、新規参入をふくめた農家経営を応援する対策こそ必要です。
先月十五日―十七日に開かれた農民連定期大会は、安倍内閣の農業切り捨て政策に真っ向から立ち向かい、安全な食料の生産・供給と国民各階層との連帯による食料と農業をまもる活動を交流、大きく広げることを確認する意気高い大会でした。
安全な食料、農業の再生
そこには、農業者と消費者である国民が協力して、日本の大地に根ざした安全な食料と農業を守る国民的な運動を発展させる条件が生まれていることをしめしています。
日本共産党は、綱領に「国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける」ことを明記し、自給率の向上と家族経営の維持・発展に力をつくしています。
いまこそ、多くの農家を切り捨て、国民の食料供給基盤をこわす「農政改革」を中止させ、意欲あるすべての農家が農業を続け、自給率を向上させる農政にむけた国民的運動を発展させる時です。